しんちゃんの徒然なる映画日記

劇場で観た映画の感想を中心に綴っていきます。これからの参考になれば・・・

藁の楯 わらのたて

2013年05月05日 17時48分12秒 | 作品名(わ行)
第307回「振り上げられた拳を、振り下ろす場所はどこに・・・」
予告編はとても大事だ。個人的に好きな映画は予告編で、公開までの気持ちを高める。まったく意識していなかった作品も魅力的な予告編で、観てみようかという気持ちにもなる。そして、予告編の大事なところは本編の核心は隠しつつ観客を劇場に誘導することだ。今回の作品「藁の楯 わらのたて」は、そういう意味では予告編は素晴らしい出来だったのではないだろうか?では1番大事な本編はというと・・・

幼い少女が暴行のうえ殺されるという凄惨な事件が発生した。現場に残されたDNAから8年前にも少女への暴行殺人を起こし、半年前まで服役していた「清丸国秀」であることが判明する。警察は全国へ指名手配をするが、清丸は逃亡を続けていた。ところがそんなある日、大手全国紙の新聞に「この男を殺してください。お礼として十億円お支払いします。」という全面広告が掲載され、あるサイトのアドレスが記載されていた。
清丸が殺したのは、日本の財界を牛耳る大物・蜷川の孫娘だったのだ。心臓病を患い、老い先短い彼はその財力を使い、清丸を殺してくれる人間を募集したのだった。新聞広告が掲載された直後に、潜伏先で殺されそうになった清丸は福岡県警に自首してきた。警察は警視庁警備部SPの銘苅一基、白岩篤子ら精鋭5人を派遣し、清丸を福岡から警視庁まで移送させることに。しかし、清丸への憎悪と賞金への欲望にかられ、一般市民や警護に当たる警察官までもが5人の行く手を阻む。果たして無事に東京まで辿り着くことができるのか?

ここのところ、このブログで何度も言っているが、奇抜な設定や脚本もある程度の説得力を持って描かれなければ、なんでもアリになってしまい映画としての面白さは半減してしまう。この作品も犯罪者に対し10億円もの賞金が懸けられるという奇抜なアイデアからお話が始まっていく。これだけのアイデアでお話が進んでいたら、ただの駄作になっていたことだろう。ここで大切なプロットが登場する。それは懸けられた懸賞金にはさらに2つの条件があった。(この条件が予告編では隠されています。)この条件があることで一般市民が賞金目当てに清丸を殺すことは無くなった。その逆に清丸を殺せる人間も絞られる。ナイスなアイデアだと私は思いました。これは面白くなりそうだとも。ところが、お話はその駄作の方向へ。病院の看護婦や資金繰りに困った零細企業の社長。さらにはヤクザ風の男達まで。そして未遂に終わった彼らは蜷川の会社に契約金1億円で雇われる。自ら課した条件を自ら破るという状態に。これでは殺すつもりは無くても未遂でいいのならと、多くの一般市民が襲い兼ねない状況になってしまった。ルールは破られるだけでは面白くはならない。

ヤフーの映画ページにあるこの映画のユーザーレビューで誰かが書いていた。清丸の護送なんてヘリを使えばいいと。ロケットランチャーなんて非現実的な武器が日本では普通に手に入るわけがないのだからと。私もそれは思いました。ただ清丸を殺したいだけなら、もっと少ない金額で引き受ける人間は大勢いるでしょう。殺人教唆で逮捕されるリスクを背負ってまで、あんな方法を取らなくても秘密裏に存在を消すことは簡単に出来たでしょう。もちろんそうなのですが、それを言ったら映画になりませんからね。どんなに奇抜な設定でも観客を納得させることが出来れば、それは魅力的なプロットになる。

今作は今までも色々な作品で語られてきた問題が語られます。「犯人を殺せば、死んだ人が戻ってくるのか?」「復讐をすれば、死んだ人が喜ぶのか?」「どうすれば、犯罪被害者の心は救われるのか?」どこかで聞いたことのあるセリフの連続に、ちょっと薄っぺらい感じを受けたのは私だけでしょうか?それでいて答えは語られていません。

点数は★★★☆☆です。評価すべきは藤原竜也が演じた清丸国秀です。演技は前にも書いたように彼は舞台向きで、今作でも以前に観た作品と同じような演技でしたが、最後の最後までクズとして描かれた清丸国秀を見事に演じ切ってくれました。それこそ殺してやりたくなるくらいに。

観終わった後にあんまりいい気分になる映画ではありません。劇中と同じように犯罪被害者となった人はもちろん、近い経験をした人は気分を悪くするかも知れません。これをカンヌ映画祭で「日本のエンターテイメントだ!」と胸を張って言っていいのかは疑問が残ります。

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大沢 たかお,松嶋 菜々子,岸谷 五朗,伊武 雅刀,永山 絢斗
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