晴れ、ときどき映画三昧

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「バジル大作戦」(65・米)65点

2020-05-14 16:57:38 | 外国映画 1960~79


 ・ 大画面での戦車部隊が迫力溢れる戦争ドラマ。

 ジョン・トーランド原作による第二次大戦末期・アルデンヌ高原での戦いを、「史上最大の作戦」(62)のケン・アナキン監督で映画化。ヘンリー・フォンダ、ロバート・ライアン、チャ-ルズ・ブロンソン、テリー・サラバス、ロバート・ショウなど豪華キャストと戦車部隊の戦いが話題となった。

 ’44年12月ベルギー・アルデンヌの戦い。ドイツ軍はブリュッセルとアントワープ占領を狙い戦車部隊を機動させるが、途中燃料不足のためムーズ川手前の米軍ガソリン集積所を狙い進行する。対する連合国アメリカ軍は大量の戦車に圧倒され撤退を余儀なくされ捕虜の虐殺など悲劇が起きる・・・。
 バルジ(突出部)の攻防を、登場人物も戦闘内容も史実を踏まえながらも大胆に脚色した戦争スペクタル。 

 当時上映する劇場が限られたパノラマ大画面で繰り広げる戦争アクションは大迫力だった記憶があるが、普通サイズで再見するとそれ程でもなく粗が目立ってしまう。改めて映画技術の変化はこの半世紀で著しいものがあるのを感じる。

 筆者は戦争オタクではないので戦車については殆ど無知だが、ドイツ軍のティガーⅡは最強で、米軍のM中4はとても相手にならないしろものだったとのこと。映画では本物ではなく、それぞれM47パットンとM24軽、一部ミニチュアで代用したという。それでも大量の戦車部隊の映像は珍しく、それだけで本作が高評価を受けた時代だった。

 エピソードを交えながらの人間ドラマが描かれているのが本作もうひとつの魅力。
 ただ独り独軍の反撃を予想した米軍偵察隊将校カイリー大佐(H・フォンダ)と、反攻作戦に全てを賭ける独軍将校へスラー大佐(R・ショウ)を中心に、戦争ドラマならではの人間模様が描かれる。

 とくに敵軍であるへスラー大佐の描き方が米国映画には珍しく丁寧で、その凜々しい軍服姿で<パンツアー・リート(戦車の歌)>を歌うシーンなど、エリート軍人らしい凜々しいオトコとして描かれている。
 さらに捕虜の少年兵を命乞いする父親を銃殺指令したり、従卒兵コンラート伍長(ハンス・クリスチャン・ブレヒ)の息子の誕生日プレゼントで曹長に昇進させたり、規律を重んじる合理性と優しい人間性を併せ持つエピソードが随所に窺われ主役を喰うほど個性的キャラクター設定である。英国俳優R・ショウにとっても「007・ロシアより愛をこめて」(63)と並ぶ代表作となった。

 米軍のヒーローは冷静な指揮官・グレイ将軍(R・ライアン)、捕虜になりながら小隊を率いガソリン集積所奪取を目指すウォレンスキー少佐(C・ブロンソン)、恋人の敵討ちに燃えるガフィ軍曹(T・サラバス)など分散されていたため、カイリー大佐の奮闘ぶりが際立たなかった。
 女優ではガフィの恋人ルイーズ役のピア・アンジェリが光った。当初ジャンヌ・モローに打診したが出番が少なく断ったため回ってきた役だったが、ジェームズ・ディーン最愛の女優である彼女がオトコばかりの戦争ドラマに唯一咲いた花のようで印象に残った。

 コンラートがへスラーに向かって言う<軍服のために世界を殺す>というシークエンスと、再び流れるパンツアー・リートとともに独軍捕虜兵の隊列で幕を閉じる167分。戦勝賛歌が多いこの時代の米国映画には珍しく<反戦の意義を込めた戦争大活劇>でもあった。

 

 

 


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