・ スマホを公開する7人が織りなすイタリアン・コメディ
イタリアのアカデミー賞といわれるダビッド・ディ・ドナテッロ賞の作品・脚本賞を受賞した群像シュチエーション・コメディ。監督はCM出身のパオロ・ジェノヴェーゼで脚本は彼を含め5人によるものだ。
月食の夜、ロッコの家に親友レレ・コジモがパートナーとともに久し振りに集まった。バツイチのペッペは新恋人とともに来るはずだったが風邪を引いたらしく一人で現れ、7人の食事会は和やかに始まった。
お酒や食事がはずむ中、ロッコの妻エヴァがスマホを使ったゲームを提案した。
それは、メールが届いたら全員のいる場で開く。電話がかかってきたらスピーカーに切り替え話す。というたわいないが危ないもの。
夫婦や親友の秘密や疑惑がもとで、悲喜こもごもが交差していく。
群像密室劇というジャンルで思い出すのは「十二人の怒れる男」(57)、「キサラギ」(07)など人間の深層心理に迫る傑作が多いこと。
本作もスマホというパンドラの箱を開けたことにより、夫婦の浮気や隠し事・親子の悩みや家族の形態・性癖など隠された事実が明かされ、人間関係の複雑さを露呈していくさまが描かれている。
原題は「あかの他人」だが邦題はR・ポランスキー監督、J・フォスター主演の「大人のけんか」(11)にアヤカッタのかもしれない。
一歩間違えるとドタバタ喜劇やシリアスな罵り合いの人間描写作品になりかねないところを微妙なサジ加減で大人のコメディに仕上げたのはイタリア風のセンスだろうか?
スマホという秘密のブラックボックスや指輪・ネックレスなどの小道具、たばこや美味しそうなワインと食事、そして月食の夜という背景がこのドラマを巧みに運んで行く。
テンポよく進む会話に字幕を追うのに必死だったが、いつの間にかペッペの恋人ルチオの席で共に過ごしている気分にさせてくれる。
収集がつかなくなりそうな場をいつもとりまとめようとしていたのは、最初からゲームを反対していたロッコ。娘の悩みを聴いてアドバイス、妻の浮気にもさりげなく釘をさしていた大人の配慮に拍手!
スターの出演はなくてもペッペのジュゼッペ・バッティストン、レレのヴァレリオ・マスタンドレア、エヴァのカシア・スムトゥアニクなど芸達者揃い。
舞台劇のようなこの人間関係に絞ったワンスチエーション・ドラマは各国からリメイクのオーダーがあり、スペインでは製作が決定しているという。
監督には健康やお金に関わる続編の製作を期待したい。
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