晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「勝手にしやがれ」(59・仏) 80点

2021-09-16 12:03:46 | 外国映画 1946~59
 

 ・ 高校時代、初めて映画館で観たフランス映画。

 仏・ヌーベルバーグの旗頭、フランソワ・トリュフォー原案、ジャン=リュック・ゴダール監督・脚本による映画史の分岐点となるといわれる記念碑的な作品。日本での公開時、高校2年だった筆者にとって初めて自分の意思で観たフランス映画として記憶に残っている。当日、東京・池袋の映画館は満員で立ち見だったのも懐かしい想い出。

 ボギーに憧れるミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)はマルセイユで車を盗み、追ってきた警官を射殺する。パリへ着いてアメリカの留学生で新聞の売り子・パトリシア(ジーン・セバーグ)と会う。ミシェルが警察から追われていることを知り逃避行を始めるが・・・。

 主人公の2人が今までとはまるっきり違うキャラクターに驚かされ、あれよあれよと言う間にFinマークが出たのを今でも覚えている。16歳で観た2人は、大人でスタイリッシュ。何といってもJ・セバーグのショートカット(セシル・カット)とTシャツ・パンツスタイルがキュートで、すっかり魅了されてしまった。周りの女の子とはまるっきり違う人形のような存在。前年「悲しみよこんにちは」でデビューを飾ってセシル役だったのを後で知った。奇しくもパリの大通りの車中で亡くなったのが41歳だったという。
 今月88歳で亡くなったフランス映画界のレジェンド・ベルモンドもアラン・ドロンとは両極の奇妙なサル顔で、冴えないチンピラなのにボギー・スタイルとサングラスがカッコイイ。ミシェルの刹那的な生き方は時代を反映していたのだろうが、従順な?高校生である筆者には、非現実的な若者像としてしか映らなかった。

 50年代中頃アンドレ・バルサンが主宰する映画研究誌「カイエ・デュ・シネマ」から出たヌーベル・バーグ。従来の映画の概念を180度覆して、驚きと困惑の作品群を次から次へと繰り出している。その共通点は・ロケが中心で同時録音 ・即興演出 ・大スター主義の否定 など。

 とくに本作の最大の特徴は独特の編集。説明を排除するような編集はジャンピング・カットと呼ばれたそうだが、2時間余りのフィルムを90分に縮小するための苦肉の策とも言われている。それによって省略された分は、観客が想像する以外ないので解釈の多様性が生まれるという効果があった。究極のアマチュアによるヘタウマと共通する編集がオシャレ度を増して見えたのかもしれない。

 憧れのパリの街をゲリラ撮影した斬新な映像は、ベトナム報道カメラマン出身のラウル・クタールによるものだが、ライティングなしの高感度カメラのリアルさは感動もの。もうひとつ憧れていた車が沢山見られたのも興味深く、全編に流れるマルシャル・ソレルのモダンジャズ、映画史に残る名ラストシーンとともに16歳の少年時代に戻れる想い出深い作品である。
 
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿