・ 若い頃の想い出をたどる悔恨と赦しを描いたミステリー・ドラマ。

英国ブッカー賞受賞のジュリアン・バーンズ「終わりの感覚」をニック・ペインが脚本化、「めぐり逢わせのお弁当」(13)のリテーシュ・バトラ監督の長編2作目。
原作も未読・監督作品も未見なので、どんな作品か期待を込めて観た。
年金生活で中古カメラ店を営むトニーのもとに見知らぬ弁護士からの手紙が届く。500ポンドの遺産と遺品を送るという内容だが、遺品はなかった。
バツイチだが元妻(ハリエット・ウォルター)や出産間近の娘(ミシェル・ドッカリー)とも交流があるトニー。静かな日々に突然舞い込んだ遺産の送り主は、40年前別れた初恋の人ベロニカの母親だった。
記憶の彼方だった青春時代の想い出を辿る旅に出るような気分だったトニーは、ノスタルジックな回想に浸ることではないことが判明してくる...。
現実と回想の時間軸を交錯させながらミステリー・タッチで進むドラマは、静かな引退生活を送る主人公にとって別れた恋人との再会し懐かしむ淡い期待とは違う独りよがりなものだった。
トニーを演じたのはジム・ブロードバンド。「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズや「アイリス」(01)などの父親役や「家族の庭」(10)の夫役でお馴染みだが、主演は意外と少ないベテラン俳優。
密かなエリート意識と自己本位な老人を見事に具現化し、同世代の筆者には共感させられる。
40年ぶり再会するベロニカには「さざなみ」(15)のシャーロット・ランブリングが扮し、トニーに向かって若い頃のトニーの言動に「法的にはイエス、道徳的にはノー。」と言い放つ毅然とした態度は、彼女ならではの演技。
若き日のトニー(ビリー・ハウル)とベロニカ(フレイア・メイヴァー)は英国らしい伝統を踏まえた60年代。どちらかというとベロニカに振り回され振られたトニー。
大学に進んで親友だったエイドリアン(ジョー・アルウィン)と付き合っているとの知らせ。その時の激情ぶりが思わぬ方向へ進んでいったのをトニーは忘れてしまったのか?それとも忘れようと修正してしまったののだろうか?
シングルマザーになろうとする長女が登場するが原作にはないとのこと。彼女と元妻の存在がトニーの救いにもなっている。おそらく元妻も原作より思いやりのある女性に描かれていたのでは?
若い頃の想い出は美化しがちなのは、筆者にも思い当たることが多い。










