・「知っているだろう?恋と咳は隠せない」
'44イタリア・トスカーナ地方、ナチ占領軍から逃れ連合軍を探しに出たリーダーのガルヴァーノ(オメロ・アントヌッティ)が、旅の終わりに伯爵夫人コンチェッタ(マルガリータ・ロサーノ)へ伝えた言葉。
ナチ傀儡政権を支持するファシスト・黒シャツ党とレジスタンスとが争う悲惨な状況にも関わらず、当時6歳のチェチリア(ミコル・ギデッリ)にとって、連合軍を探す旅はまるでピクニックに行くようなウキウキした気分だった。
スイカを食べたり、大切な生卵に腰掛けたり、米兵からガムやコンドームの風船をもらったりハプニングを体験しながらの旅は続く。
時には追跡してきた黒シャツ党がカルヴァーノ一行を銃撃する恐ろしい目にあったりするが、母親イヴァーノから教わった呪文を唱えると、突然ローマ軍騎士団が現れ槍で串刺しにして征伐してくれた。
パオロとヴィットリアのタヴィアーニ兄弟が製作したドキュメント「サン・ミニアード'44年7月」を寓話風にリメイクした本作は、「父パードレ、パドローネ」(77)と並ぶ代表作。2人の体験を基にしたこのドラマのチェチリアは分身であり、ガルヴァーノは父親がモデルとなっている。
聖堂に避難した村人たちが爆破されたり、顔見知り同士が敵味方となっての銃撃戦など、それぞれのエピソードはリアルに描かれ、あっけなく命を失うその悲惨さや虚しさばかりが浮き彫りにされてしまう。
そこで、チェチリアの視点でロレンツォに捧げる8月10日<流れ星がたくさん見られるときに呪文を唱えると願いが叶う>という諺をもとに描くことによって、いくらかでも緩和させる役割を果している。
バックに流れる二コラ・ピオヴァーニの叙情豊かなメロディとともに、このヒューマニズム溢れるストーリーは終焉を迎え、お天気雨のラストシーンはあらゆる人々の喜怒哀楽を洗い流してくれそうだが多大な犠牲を伴った内戦は<覆水盆に返らず>。
ガルヴァーノの述懐は「これが40年前だったら良かったのに。今は歯がないんだ。」これもまた<覆水盆に返らず>だ。
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