シャネル&ストラヴィンスキー
2009年/フランス
触発し合ったシャネルとストラヴィンスキー
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 80点
クリス・グリーンハルジュ原作・脚本をヤン・クーネンとカルロード・グニティが脚色して、Mビデオ出身らしく美しい映像に定評のあるヤン・クーネンが監督している。
1913シャンゼリゼ劇場で初演されたオペラ「春の祭典」は、ストラヴィンスキーの革新的音楽とニジンスキーの振付けが酷評される。数少ないブラボーの声に賛同したココ・シャネルは7年後ミシアが主宰するサロンで再会したストラヴィンスキーへガルシュに所有するヴィラで暮らすことを提案する。妻と4人の子供とパリで亡命中のストラヴィンスキーは家族ともどもというシャネルの提案を受けることに。
シャネル生誕125周年を記念した映画の3作目。史実を踏まえた映画なのでどこまで本当なのだろうか?と関心を抱いてしまうが、フィクションとして観てもなかなか面白い。シャネルは13年ドーヴィルにブティックをオープンし、最愛のヒトでパトロンでもあったアーサー”ボーイ”カぺルを失い孤独を囲っていた。シャネルは芸術家としての孤独とエゴをストラヴィンスキーに自分を重ねていたのだろう。シャネルが生涯独身を全うしたが愛したヒトは3人とも仕事のパトロンかパートナーだった。ストラヴィンスキーとはボーイと香水のパートナーであるディミトリ・パロヴィッチの隙間に出逢っている。ひとときの出来事から真実に迫り、人生を芸術に捧げ触発し合った2人について描こうとしたのだろう。
シャネルは自立した女として妻子が同居する男を愛しながら「君は芸術家ではなく洋服屋だ。」といわれ「私は愛人ではないのよ。」と言い放つ。その間女の強さを香水にしたのが<NO.5>というが、エピソードとして描かれる程度で感動はない。
名言が多いシャネルだが本作は言葉は少なく、演じたアナ・ムグラリスがその風貌とスタイルでシャネルを表現している。ストラヴィンスキーを演じたマッツ・ミケルセンも台詞よりその孤独な風貌と筋肉質の体による演技で独特の世界を創っている。ドラマとしてもっとも印象に残る演技をしたのはストラヴィンスキーの妻カトリーヌを演じたエレーナ・モロゾワ。病弱ながら写譜としてカケガエのない存在。白と黒で統一したシャネルトーンにさり気なく赤い服で主張する。妻のいる男を愛して恥ずかしくないのかといって去ってゆく別の女の強さを見せていた。
触発し合った2人だが、3大オペラでひとつのスタイルを創ったストラヴィンスキーがバロックへの回帰をした新古典主義に転換したのはシャネルと関係があったのだろうか?
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