晴れ、ときどき映画三昧

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「大砂塵」(54・米)70点

2022-02-10 17:20:10 | 外国映画 1946~59


 ・ 主題歌が大ヒットした異色の西部劇。


 ロイ・チャンスラーの小説「ジョニー・ギター」を西部劇専門の製作会社リパブリック・ピクチャーズで映画化。監督は「理由亡き反抗」(55)のニコラス・レイで、ペギー・リーが歌う「ジャニー・ギター」が大ヒットしたことで有名な西部劇。
 主演は本作の映画化権を最初に持った大女優ジョーン・フォーンティーン。

 赤い岩山がそびえ立つアリゾナの砂嵐が舞う鉱山の街に、ギターを背にした男が酒場ヴィエンナに入っていく。後を追うように酒場に入ってきたのは女牧場主エマを始めとする地元の有力者や保安官たち。
 鉄道開通を見込んで酒場経営の拡大を計ろうとするヴィエンナと今の生活をおびやかされるのでは?と不安を持つ街の人々。なかでもエマは兄殺しの疑いをヴィエンナに持つが、ヴィエンナはダンシング・キッド一味だという。そこに現れたのがキッド一味の四人組だった・・・。

 独自の<トゥルー・カラー>映像によるセドナの岩山を背景にものすごい砂嵐とともに、謎の流れ者・酒場の女主人・街の有力者たち・ならず者と主要人物が出揃う冒頭のつかみはこれからの展開を大いに期待させてくれる。

 のちのC・イーストウッド作品のように謎の男ジョニーが愛する女を救い悪を退治して去って行くいくストーリーを想像していたが、雲行きがおかしくなっていく。

 スターリング・ヘイドン扮するジョニーは元凄腕のガンマンが訳あって銃を捨てギターを持った渡り鳥となったが喧嘩の仲裁はギターを弾くだけだし、女主人ヴィエンナとは5年前別れた恋人同士だった。おまけに「嘘でもいいから、今でも俺を好きだと言ってくれ」とまでのたまうとは?
 「男に似合うのは酒よりも一杯のコーヒーとタバコだけだ」というしゃれた台詞が売りだが題名とは裏腹にジョニーの存在感は薄れていく。

 代わりに存在感がどんどん増すのは49歳でカムバックしたジョーン・フォーンティーンが演じるヴィエンナ。「男は誇りさえあれば男のままでいられるが、女は一度でも道を外せば売女扱い」と主張する男装の麗人だ。
 '30年代全盛期はシンデレラ・ストーリーで一世を風靡、45年ミルドレッド・ピアースでオスカー女優となったが「突然の恐怖」(52)以来本格的出演で、大女優としての自負と焦りもあってシナリオを書き直させたほど。

 ジョニー以外でもダンシング・キッド(スコット・ブレイデイ)、街の有力者ジョン・マッキンバー(ワード・ボンド)、保安官(フランク・ファーガソン)など振り回される男たち。唯一頑張ったのがキッド一味のバート(アーネスト・ボーグナイン)のみ。

 お陰で敵役となったのはエマ役のマーセデス・マッケンブリッジ。「オール・ザ・キングスメン」(49)でオスカー助演賞を獲った演技派だが、キッドを巡っての嫉妬心からヴィエンナを亡き者にしようとするただヒステリックな嫌な女として描かれている。実生活では夫のフレッチャー・マークがJ・フォーンティーンの元恋人だったから女同士のバトルは凄まじい迫力となっている?

 当時の正統派西部劇とは何から何まで真逆の本作は本国では不発だったがフランスでトリュフォーやゴダールから大絶賛され、主題歌とともに異色の西部劇として語り継がれることとなった。

 
 

 

 


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