晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「バルカン超特急」(38・英)80点

2020-02-01 12:46:10 | 外国映画 1945以前 

・ 30代のヒッチコックが描いたサスペンス・コメディ。
ヨーロッパ架空の国<パンドリカ>からイギリスへ向かう列車で起きたミステリーをユーモアたっぷりに描いたヒッチコックの傑作。原題は「THE LADY VANISHES」。
公開した38年は第二次大戦の前年で欧州はキナ臭い最中で、英国のポジションを暗示するような登場人物が笑いを誘う密室劇サスペンスの傑作。
雪崩の影響で列車が止まりホテル宿泊を余儀なくされた人々。クリケットの試合が気になる英国紳士のふたりは部屋が満席で何とか女中部屋に泊めてもらう。二人を中心に物語りが進行するがどうやら狂言回しのよう。
他には旅行中の女性アイリス、民族音楽学者の卵ギルバート、不倫旅行中の弁護士とその愛人、音楽教師の老婦人など・・・。
漸く列車が開通する車内で知り合ったアイリスと老婦人。一眠りしたあと老婦人は消え乗客の誰も知らないという。
前半はコメディで中盤はミステリー、後半アクションまであり最後はロマンスと種明かしで締める。若かったヒッチコックがその才能を縦横無尽に発揮してプロカバンダ映画をユーモア溢れるコメディに仕立て上げている。
今観ると突っ込みどころ満載だが、斬新なプロットで戦前の観客に拍手喝采を受け、ハリウッド進出のキッカケとなった。日本では大分あとの76年漸く劇場公開され絶賛を浴び<密室サスペンスのお手本作品>と評された。
ヒロイン・アイリス(マーガレット・ロックウッド)は金髪美女ではないが、如何にもしっかり者のヒッチ好みの美人。相手役のギルバートを演じたのはマイケル・レッドグレーヴで名女優ヴァネッサは彼の実の娘。いがみ合っていた二人が事件を協力するうちロマンスへ発展するというのもヒッチお得意のパターン。
今観ると何とものどかで、オシャレなひとときを過ごさせてくれるスパイ映画作品だ。