晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「ウィンド・リバー」(17・米 )80点

2019-02-03 14:05:49 | 2016~(平成28~)

・ T・シェルダン監督デビュー作は、濃密なクライム・サスペンス。


メキシコ国境の麻薬「ボーダーライン」(15)、テキサスの銀行強盗「最後の追跡」(16)の脚本で知られるテイラー・シェルダン監督デビューはフロンティア三部作最終章。

アメリカ・ワイオミング州、深い雪に包まれた先住民保留地区。地元の野生動物管理局のベテラン・ハンター、コリーが若い女性の遺体を発見する。遺体はナタリーで、亡くなった娘の親友だった。
FBI新人捜査官が派遣されるが、地元警察は人手不足のうえ慣れぬ土地柄から捜査は難航。コリーに応援を頼む。

生きて行くには過酷な辺境に住む人々の貧困・差別・暴力など過酷な環境を背景に、二人の視点で描かれ見応え十分な現代版西部劇の趣。

主演のコリーを演じたのはジェレミー・レナー。3年前に娘を亡くし持って行き場のない怒りを内に秘めた抑制的な男に扮して、キャリア・ハイともいえる好演だ。先住民の妻とは離婚しているがこの地に残り、幼い息子には生きて行くための躾けは怠らない。

かたや新人捜査官ジェーンに扮したのはエリザベス・オルセン。慣れぬ土地で悪戦苦闘しながら懸命に職務を全うしようとする。パワハラに近い境遇だが、その一途さが地域に認められるかがカギ。

医学的には自然死であるナタリーは、明らかに事件に巻き込まれたのでは?

ジェーンたちが捜索で辿りついた石油掘削所のドアをノックするシーンで、遡って新事実を映像化する手法が斬新だ。
さらにエンタメたっぷりな迫力の銃撃戦と<白い地獄>の終盤が続いてエンディングを迎える。

現地は「ガンよりも高い死亡率」で「ネイティブ・アメリカンの失踪者統計は存在しない。人数も不明」というところ。

米国最大の失敗は<先住民保留地政策>だといわれながら、忘れ去られてしまったような舞台に脚光を当てたT・シェルダンに拍手を送りたい。