父の条件の話

母ちゃんを
1年に1回は東京に招待すること。


内定が出たことを父ちゃんに告げると、
そんな条件を提示された。


二つ返事で了解したけれど、
母ちゃんは遠出があまり好きじゃないので、
多分僕が帰る方がいいだろうと言ったのだけど、
「東京にいる僕を見せて安心させてやれ」
ということらしい。


あ。
「1年に何度かは帰ってきて、なおかつ1度は招待しろ」
ということか。
やられた。


どちらにしても、
近いうちに実家に帰って
どんな会社に入ってどんな仕事をやるのか、
それを説明する必要がある。


ずっと心配をかけてきたし、
今もなおかけている。

だから、安心してもらえるように
しないといけない。



僕の父ちゃんは
いわゆるブルーカラーの仕事で
一人親方をしている。

母ちゃんに
「いざとなったら、
父ちゃんの弟子にしてもらうけぇ大丈夫。」
と笑いながら言おうと思っている。

もちろんそんなつもりは毛頭ない。


けれど、
それで少しでも安心してもらえるような気がする。


「嘘」というと聞こえは悪いけれど、
たとえ思っていなくても、
その人のためになる言葉を探すことも
良いことだと、僕は思う。


明日の座右の銘は
「夫唱婦随」