昨日、松本人志第1回監督作品『大日本人』を観てきましたが、彼独特の笑いの創
造性を感じる作品だったと思います。
これまでのヒーローものに関しては、常にヒーロー像や戦闘シーンの格好良さな
ど、陽のあたる部分にスポットライトが当てられていました。最近では、そこに
人間くささ、苦悩などの要素も作品に加わってきましたが、それも主人公の格好
良さを引き立たせるものだと思います。
ところが彼自身はそれを完全にぶち壊す…つまり、ヒーローの通念となっている
ものを完全に破壊し、ブサイクさをとことん追求するところに、彼のオリジナリ
ティーが作られているような気がしました。
また、作品全体の作りがインタビュー形式で展開されているのですが、それも時
系列にストーリーを進行させる要素を持ちつつも、主人公の人間像を浮き彫りに
する、松本独特の手法であるようにも感じられました。
全体的に、個性が強い、灰汁の強いキャラクターが次から次へと出てくるのです
が、それをコミカルな演出で見事に調理している感じがします。これも普段の彼
の笑いに対するスタンスと同様、キャラクターに対する気遣いが滲み出ていると
ころなのでしょう。
その点については、『BRUTUS(2007/6/15)「絶叫する脳」全発言の記録』からよく
分かります。
(以下、松本人志を“松本”、茂木健一郎を“茂木”と表記)
茂木:芸人が松本さんと絡んでると、完全に飲まれているもんね。
松本:飲む気はないんですけどね。気遣いますね、確かに。対等にやろうと
しても、「あ、ゴメン、壊しちゃったね」みたいなことはありますね。
(中略)
松本:出る杭は打つってこの世界よく言いますが、僕はそれまったくないで
すから。
結局のところ、独特の松本ワールドが展開されるこの映画は賛否両論分かれると
ころだと思いますが、これまでにないエンターテイメントに仕上がっているのは
まぎれもない事実です。是非お試しあれ…。