しまなみニュース順風

因島のミニコミ「しまなみNews 順風」は、しまなみ海道沿いの生活情報をリリースし、地域コミュニティー構築を目指します。

なつかしい場所 Ⅶ

2010-01-24 15:03:20 | ヨット
六島へ

北木島の大浦港から、
コリンさんに見送られて15時過ぎに出港すると、
まずまずの風が吹いていた。
風向は、南西。
風速は、4m前後。
機走でセールを上げられそうな場所へ移動している途中、
ぼくは、
燃料計にくぎ付けになった。
しくじった。
心の底から燃料の残量が少ないことを後悔したのだった。
こうなったら、
エンジンを切って、
何が何でも帆走だけで六島へ行く必要がある。
セールを上げてからは、
真鍋島へコースを取り、
海岸線ぎりぎりまで接近してから、
北木島へ行くときに見た問島へコースを取った。
それから今度は、
真鍋島の西端をかすめるように真南へコースを取って帆走させた。
六島へのコースは、風が真正面だったので、
タッキング(斜め45°で風上に切り上がるためのコース変更)を繰り返す必要があった。
船速は、5ノットほど出ている。
時折、強い風が吹いて、
ガンネル(舷側)に波が掛かるほどヒール(ヨットの傾き)する。
風が冷たい。
波を叩く大きな音に、ときどきびっくりさせられる。
メインセールは、
思いっきり張っているはずなのに、
中央部分は中年のメタボのように膨らんでいる。
ユウコウマリン」で見たセールが欲しくなってくる。
コースは、ちょうど多度津町の佐柳島を真東に見て通るコースで、
このまま進めば、間違いなく本船航路へ突入する。
国際VHFを積んでないぼくのヨットでそんな場所をうろちょろしたら、
それこそとんでもないことになる。
ぼくは、
GPSの画面を食い入るように見つめて、
最終的にタッキングできる場所を探していた。
その場所は、
本船航路の手前にあり、
六島へは真西へ進むコースとなっていた。
ちょうど日没時間の手前ということもあり、
逆光で六島のようすがよく見えない。
島影全体が、
真っ黒い塊のように見えて、
神々しくさえ感じられる。
後ろを振り返ると、
北木島が小さくなっていく。
大浦の桟橋で手を振って別れたコリンさんの笑顔が思い出される。
北木島から六島までは、
予定としては1時間半ほどだけど、
風に恵まれたせいか、
ずいぶん早く到着できそうだった。
おまけに、燃料も節約できた。
しかし、
六島へ着いたら、すぐに予備燃料を給油する必要がある。
それでも足りなかったら、
恥を忍んで六島の人に助けてもらうしかない。
徐々に、逆光で見えなかった六島が見えてきた。
特徴的な天理教の教会も見えてきた。
ぼくは、
セールを下ろして、
前浦へのコースを取った。
半年ぶりの六島は、なつかしい。
防波堤で囲まれた前浦の港の入口は、
一度でも行ったことのある人間でないとよく分からないだろう。
港への狭い侵入口からは、すぐに公営の立派な桟橋が見える。
時間は17時を回っていた。
ぼくは、
桟橋の右側にヨットを接舷させることにした。
これは、
六島の中尾さんからの指示で、
明日は、「六島水仙ツアー」があるため、
後で、係船場所を移動することになっていた。
ヨットを接舷させて、桟橋に降り立つと、
港の様子がよく見える。
去年の夏、前畑商店の前のテントでビールを飲んだことを思い出す。
しかし、
そのテントは見当たらなかった。
冬は風が強いのでテントを立てないのかもしれない。
桟橋から、前畑商店へ向かって歩いて行く。
道沿いには、お寺の宿坊があり、
この日は、ここで宿泊することになっていた。
六島のメインストリートは、
すでに夕やみに包まれ、夕陽の残り火が街並みを僅かに照らしている。
本船航路を走る貨物船が、
灯火を付けてゆっくりと航行していく。
前畑商店の前に到着すると、
前畑さんが店の前にたたずんでいて、
ぼくがやって来るのを見ていた。
たぶん、
中尾さんからの連絡で、
待っていてくれたのだろう。
温和な笑顔は、相変わらずで、
その優しい人柄に心がゆるむ。
「お久しぶりです。お変わりありませんか」
「久しぶり。今日は、妙音院へ泊る予定よね」
「ええ、そうです。
やっぱり、真冬にヨットで寝るのはちょっと。
用意はしてきたんですが、
宿坊があると、そっちの方がいいでしょうから」
ぼくは、
そこここ前畑さんと会話した後、
ヨットの片づけをしに行くことにした。
因島から北木島までは、
あまりヒールはしなかったけど、
北木島から六島までの間は、
クローズホールト(向かい風に45°で切り上がる帆走)で走っていたので、
いろんな物が艇内に転がっているかもしれない。
ドッグハウス(客室)へ入ると、
スポーツバッグやGPSのカバー、ラジオ、
ペットボトルなどが床に転がっていた。
思ったほどの散らかりようではなかった。
着替えと、宿坊で飲む予定の日本酒の5合瓶をスポーツバッグに詰めて、
ぼくは、宿坊へ向かった。

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