薩摩反骨1・良い音とは何か-スピーカー特有の問題点

2022年10月21日 | 薩摩反骨(スピーカー維新)

反骨精神! 長い物に巻かれるな(そのうち踏まれちゃうゾ!)

 

◆ 良い音とは何か-スピーカー特有の問題点

 

<「柔らかい」と「クリアー」の二律背反問題>

  音の基礎体力について、「柔らかいのにクリアーで実在感がある」音であると定義しました。

 さて実は、「柔らかい」、「クリアー」という二つの要素は、スピーカーシステム特有の性質によって二律背反になっています。つまり、柔らかい音が出る様な処置を施すと、覇気が無くなる傾向になります。反対にクリアーな音が出るような処置を施すと、硬い耳障りな音になる傾向が生じます。美味しいところの両方取りが出来ないのです。この二律背反問題は、スピーカー最大の難問なのです。

 

<音作りの現実と当社のスタンス>

 スピーカーの音作りの現実として、上記二者を絶妙にバランスさせ、また音域ごとにこれらのバランスを変えたり、音域ごとの音量バランスを変化させたりして、総合的に音をまとめる事になります。これらが様々な個性を持つヴィンテージと呼ばれる名器群になったものと思われます。まさにスピーカーは楽器的(注1)であると言われる所以です。

 対して、近年の音作りはどうでしょうか。低音部にクリアー感を、中~高音部に柔らかさを優先したものがトレンドだと思います。迫力がありながら覇気の無い鳴り方をするというのは、クレームの出にくい音作りかも知れませんが、私には商売のための妥協の産物にも感じられます。この様な物作りは、スペックは良くとも、本質を見失った魅力のないものと言わざるを得ません。

 さてそれでは、当社の求めるところはどこにあるのでしょうか。二律背反と申し上げましたが、本来は基礎体力の三要素を同時に且つ高度に実現しなければなりません。例えばSTAX社のコンデンサー型ヘッドフォンは、中音~高音域において、柔らかさとクリアー感を高度に両立させた点で名器とされていますが、更に私は(ヘッドフォンではない)ダイナミック型スピーカーで、全音域において基礎体力の三要素を同時且つ高度に成立させることを目標にしております。

(注1) 特にユニット開発者は、耳から血を流す様な(?)苦労をしながら泥臭い仕事をやっています。しかし巷には、周波数特性論で全てが解決するかの様な議論があるので、「その様な話はヘソで茶を沸かす様な戯言だ」と言う人がいたとしても、私は否定しません。勿論、その様な安易な宣伝を行うメーカー側にも罪があるのですが・・・

 

<二律背反問題のブレークスルー>

 スピーカー特有の二律背反問題の解決には、技術的なブレークスルーが求められます。私の見出した二律背反の根本原因は、振動板の波打ち現象(分割振動)です。そして、その本質解決(注2)というブレークスルーが当社特許のDSS振動板です。その成果は 島津Model-1 に垣間見る事が出来ると思います。振動板に関する更に詳しい技術内容は、改めて取り上げたいと思います。今後の製品ラインナップにもご期待ください。

(注2)現代のハイエンドスピーカーでは、高性能素材を使い、コンピューター解析を利用したと謳っているので、分割振動の問題があたかも解決したかのように見えます。 しかし、過去も現在も、分割振動の塩梅を調整するという同じ対症療法のままです。実態としては、「柔らかい」と「クリアー」の中間の何処かに落としどころを求めているに過ぎません。そもそも塩梅とは、測定やシミュレーションではなく、聴感で決めるべき種類のものです。そして現代のトレンドに合わせて周波数特性を優先すれば、「柔らかい」に振る事になります。その代わりに魅力の無い音になります。しかし、「柔らかい」と「クリアー」の高度な両立のためには、塩梅調整ではなく、分割振動そのものの本質排除が必要なのです。

 

以上

 

 次回は、DSS振動板ユニットについての詳細を解説します。

 

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