香川県の風俗事情

香川県風俗研究会1936年刊『讃岐風俗圖會』荒井富三郎著によると
「高松市中で、呼聲あげる魚賣はこのいただきなり……」
と、記述がある。
内容は，平家の流人の姫が家来の獲ってきた魚を生活のため売り歩いたのがこの鼻祖といい、仕入れは仲卸からするのではなく、漁師の夫の獲物だった。
それをはんぼ魚桶に入れ頭上に戴きいかやたこ
（魚の名）ごよう――お肴買ふていたいな
と、軒毎にたたずんだ
（1682年上梓井原西鶴「好色一代男」の巻３・袖の海の肴賣には
小倉について港の朝景色を見ると髪をすべらかしに結びさげた女たちが浅い半切り桶を頭にのせ道をいそぐので―――様子をきくと
これは、このところの魚売りで「たたじょ」です、という。
※「たた」は方言で生魚を行商する女
「じょう」は敬称で　さん　ぐらいのいみ
：高松では「いただきさん」西鶴は、伊勢言葉では「やや」というのと同じで所によって名前の変わるおもしろいものであるとむすんでいる）が、昨今ではほとんど箱車に魚はんぼを載せて売り歩いている。
現在のいただきさんは、仲卸から商品を仕入れ、サイドカー（三輪自転車）に載せて行商している。住宅街、繁華街などなど定められたコース（なわばり）を、定まった時間に巡っている。
また，「いただき」は，他の地にもあり，四国で名高いのは，松山市の近くの松前町（まさきちょう），徳島県由岐町（現美波町）阿部（あぶ），伊座利（いさり）である。松前町では，「おたたさん」と言っている。