山奥の小部屋より

山奥の司法書士が感じたこと

民事裁判手続等IT化研究会第9回資料

2019-04-26 09:07:28 | 裁判関係
公開されています。

公益社団法人 商事法務研究会 民事裁判手続等IT化研究会

資料9-1では、オンライン申立の一本化について議論されているようですね。

【甲案】
訴えの提起等裁判所に対する申立て等のうち書面等をもってするものとされているものについては,電子情報処理組織を用いてしなければならない(オンライン申立て一本化)。
【乙案(本人訴訟については例外を認める案)】
訴えの提起等裁判所に対する申立て等のうち書面等をもってするものとされているものについては,電子情報処理組織を用いてしなければならない。ただし,訴訟代理人がいないときは,この限りでない。
【丙案】
訴えの提起等裁判所に対する申立て等のうち書面等をもってするものとされているものについては,電子情報処理組織を用いてすることができる(書面併用型)。

甲案は、シンガポールのような感じでしょうか。
(紙で持ち込んだ場合、それを電子化した上で、裁判手続に乗せるというシンガポールよりも、甲案の方が厳格な気もしますが)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/dai2/siryou5.pdf

乙案は、2022年からのドイツに通じるようなイメージを持ちました。
弁護士や公的機関について、電気通信手段によってのみ認められるという規律ですね。
なお、ドイツの区裁判所(日本の簡易裁判所)は、本人訴訟が認められているため、ドイツ民訴法では「裁判所との電子情報交換は、電子文書によることができる」と定められています(ZPO130a条)。
そのうえで、ZPO130d条により、弁護士及び官庁に、電子的法情報交換を利用する義務を課すという作り込みですね。
(本間学「民事訴訟の IT 化と訴訟原則との関係に関する基礎的研究―ドイツにおける民事訴訟のIT化とその訴訟原則に与える影響をめぐる議論の紹介-」参照)
現在の乙案では、原則オンライン申立、例外書面許容という作りなので、原則例外がドイツとは逆転しているという印象です。

丙案は、現在の実務に、オンライン申立がオプションで乗っかる形ですね。
韓国の裁判に相当しそうです。
韓国では片面的電子訴訟も認められており、事案によっては、電子訴訟から通常訴訟への移行も可能であるとのことです。

電子訴訟の特則において述べられている「コルト・ヘディング」について、迅速化を目的として掲げられているものと思われますが、制度としてはあくまでも「裁判所が暫定的な判断をする仮処分手続」なのですね(法務省大臣官房司法法制部部付砂古剛「オランダ王国における知的財産訴訟制度(特許訴訟制度)の調査結果(報告)」2頁)、「特にオランダは、その民事訴訟法上、kortgeding といわれる急速手続(一種の保全命令手続であると解し得る)のための裁判管轄を広く認めていることが知られており、欧州において保全命令を取得したい債権者には好ましい法廷地と考えられてきた」とする的場朝子「外国特許権侵害に関する仮処分命令申立事件と特許権無効の主張―EU 司法裁判所のSolvay v. Honeywell 事件先決判断―」(京女法学第5号23頁)も興味深いところです。

少し気になる点として、民事訴訟制度研究会編「2016年 民事訴訟利用者調査」商事法務を紹介し、「裁判に躊躇を感じたと答えた回答者のうち,躊躇をした理由としては裁判に要する「時間」を挙げる者が最も多かった(78.4%)ところ」として上で、迅速手続としての電子化特則という位置付けをしているように見受けました。
しかし、もう一つの大きな躊躇理由として「費用」があり、75.3%という数字になっています。
裁判の利用という目線からは、避けて通れない課題ですね。

いずれにしても、山奥に存在する身としては、充実したIT化が図られることを望みます。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿