漂着の浜辺から
囁きのような呟き。
 




「GENE MAPPER -full build-」 藤井大洋著 
ハヤカワ文庫SF 早川書房刊

を読む。

 もともとはkindleストアの電子書籍部門において、2012年の小説文芸部門で第一位を取った個人出版だったが、反響の大きさに押されて、日本SFの総本山早川書房から大幅な増補改訂を経て出版されたという経歴を持つ作品。
 舞台は近未来のベトナム、ホーチミン。主人公は作物の遺伝子設計を行う「遺伝子デザイナー(gene mapper)」の林田。その時代には、増えすぎた人口に対処できるように、「蒸留作物」と呼ばれる遺伝子設計された食物が重宝されており、優秀な作物を作り上げることを仕事とする「geme mapper」と呼ばれる人々が存在している。ある日の深夜、林田は自分が遺伝子設計したイネ「SR06」が遺伝子崩壊を起こしたらしいという報告を受ける(遺伝子崩壊とは、遺伝子設計において、何らかのバグのようなものがあったというイメージなのだろうか)。その事実が表に出ることがあればL&B社は深刻なダメージを受けるため、対処は一刻を争うが、その原因を探るためには、既に廃棄された「インターネット」の混沌としたゴミの山から必要な情報をサルベージしてこなくてはならない(インターネットは、ある日突然、消滅してしまった。そのことは、「追放」と呼ばれている。とそれは、検索エンジンが暴走して、ネットに繋がるあらゆるコンピュータを乗っ取ってしまい、ハードディスク内のファイルをアップロードした後、OSを検索エンジンのものに上書きしてしまったため、起こった出来事である。後に人類は使い物にならなくなってしまったインターネットの代わりに「トゥルーネット」と呼ばれるネットワークを構築した)。運良くキタムラという優秀なハッカーを雇うことができた林田は、L&B社のエージェントである黒川とともに、キタムラのいるホーチミンへと飛ぶ。……というのが物語への導入。
 最近はミステリーばかり読んでいて、ハードSFを読むのは少し久々だったせいか、最初はやや読みにくいように感じたものの、一度乗ってしまうと、夢中になった。やっぱり、SF小説は好きだ。ハードSFは、ミステリーほど誰にでもとっつきがいいものではないので損をしているのだろうが、エンターテインメント性がないわけでは決してないので、もっと読む人が増えればいいのにと思ってしまう。
 導入部こそ、イネの異常の謎を調べるという、どちらかと言えば地味なものだが、その先に展開される物語は面白いし、登場するガジェット類も魅力的だった。SFならではの世界を堪能出来る一冊だと思う。





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