柴田典子の終活ブログ「エンディングノート知恵袋」

エンディングデザインコンサルタント柴田典子のブログ。
葬儀に関わらず「賢い老い支度」として終活全般のお話もしています。

赤ちゃんのお葬式

2008年04月19日 | 赤ちゃんのお葬式
「子供が亡くなりました。お葬式をお願いしたいのですが」
それは、生まれて11日目の赤ちゃんお葬式でした。

出産して、里帰りしてすぐのことでした。
急に赤ちゃんの様子が変わり、救急車で病院へ向いましたが
赤ちゃんは亡くなり、解剖されてお母さんの元へ帰ってきました。

奥様のご実家はクリスチャン。ご主人の家は仏教徒です。
でも、無宗教で家族だけで送りたい。というご希望でした。

部屋には、レンタルされたベビーベットがあり、まだ使ってないと事。

それでは、ベビーベットに今日は寝かせてあげましょう。

その隣にあるテーブルにマーガレットを飾り、写真を置きました。

産院でお母さん抱かれ、唯一撮った写真。それが遺影写真になりました。

夕方、ご夫妻と小さなお兄ちゃんとおばあちゃん、九州からご主人のご両親、会社からご主人の同僚3名が駆けつけてのお通夜です。


・・・赤ちゃんは11日と言う短い命でした。
   昨日、病院から帰ってきた、赤ちゃんを抱きしめて
   「お母さんのところに、帰ってきて」と涙を流されたお母さん。その横で
   3歳のお兄ちゃんは「お母さん、泣かないで」と声を掛けていました。
   楽しい思い出さえも作ることなく、送る葬儀は本当に辛い葬儀です。
   ご縁があって、私がこの場を勤めておりますが、この子を送るのに
   良い葬儀などあろうはずがありません。
   しかし、すでに赤ちゃんは逝ってしまいました。
   ご家族の為に、この式が少しでもお慰めになる事を念じて
   勤めさせていただきます・・・


ほんの15分ほどの通夜でした。

翌日、出棺の準備で伺うと、奥様が赤ちゃんを抱っこしていました。

「私、昨夜はずっとこの子を抱っこしてたんです。内緒だけど、夜中におっぱいも
あげました。」
「私、この子の様子にどうして気付かなかったのかしら」
「今でも、悔やんでいます。あの暗い、冷たい、警察の霊安室に
この子を、1人で置いてきた事を。ずっとそばにいてあげればよかった」

よしよし、と赤ちゃんを腕の中でゆすりながら、独り言のように話しかけてきます。

出棺が迫り、赤ちゃんを棺に納めた時
今まで、冷静に振舞っていた奥様が「いやー」と悲鳴をあげ棺に取りすがりました。

今でも、忘れられません。

その後、ご主人の膝に抱かれた棺と共に火葬場に向われました。



この奥様からその後、何度もお手紙を頂きました。

この季節になると、花屋さんの店先に出る、マーガレットを
見るのが辛くなります。
でも、やっぱりマーガレットを買って供えてしまいます。
この前、上の子が窓を指差し「おじいちゃんが赤ちゃんを抱っこして
来ているよ。赤ちゃんがお母さんは悪くないよって言ってるよ」と
話してくれました。子供には見えたのでしょうか。

この奥様のお父様は1年前に亡くなられています。

奥様の心の負担を取りにこられたのかもしれません。

今、お兄ちゃんは中学生になりました。