序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第37回公演「スマイルマミー・アゲイン」物語紹介第三場ー1

2019-06-29 19:09:23 | 舞台写真



さて第三場でございます。結婚式の親戚・友人代行業務を無事に終え、恭子と三郎が事務所に帰って参ります。



   礼服姿の三郎と、私服姿の恭子が紙袋を手に現れる。
恭子 「ただいま」
三郎 「帰ったよ。・・・」

三郎、茶の間を覗き込む。
三郎 「カアサン爆睡中」
恭子 「疲れてんのよ」
三郎 「お呼び出しを申しあげます。社長様、スマイルマミーの社長様。表で狸が待ってます」
恭子 「三郎さんたら」
範子 「(素っ頓狂な)ハイ」
     起きた様だ。笑いを堪えて来る三郎。
三郎 「起きた起きた」
     範子が這って現れる。
範子 「ああ、ごめんなさい。すっかり寝ちゃってた」
恭子 「しょうがないですよ、疲れているんだから」
三郎 「便利屋三郎、助っ人業務完了いたしました」
範子 「ああ、ご苦労様でした」

今日の仕事は終わりましたが次の日の連絡やスケジュール調整をするのは恭子の役目でございます。レギュラースタッフの由美に連絡を取ります。それを知った三郎何とかしたいと思いますが、まだ大きな声で言えない由美への想い、辛いところでございます。



三郎 「ねえ、杉浦って由美さんのトコ」
恭子 「ええ、そう。由美さん」
三郎 「アアッ」
恭子 「なに、さっきから変な声出して」
三郎 「なんでもねえたら」
恭子 「ああ、由美さん。先程はご苦労様でした。・・・ええ、お客様も喜んでくれたから大成功よ。・・・ええ、そうね。それで明日なんですが。・・・そう、いつもの通り田中さんと北川さんの所の家事代行です。ええ、九時集合という事でお願いします。・・はい、よろしく。お休みなさい」
     三郎、恭子に手を差し伸べる。
三郎 「あっ、切っちゃったの」
恭子 「あっ、何か用あった?」
三郎 「アッ、いや別に」

さて連絡業務の終わった恭子はそそくさと帰宅しょうとします。
この親子一緒に暮らしてはいないのです。三郎も感じていましたこの親子の不自然な距離感。



三郎 「相変わらずだね」
範子 「・・・そうね」
三郎 「(親指)恭子ちゃん、いるの」
範子 「いないわよ」
三郎 「だったら、何も一人暮らしをする理由がねえじゃねえか、こんな立派な実家があるのに」
範子 「色々あるのよ」
三郎 「そりゃ色々有るんだろうけどさ・・実の親子がだよ・・お父ちゃんが死んでから何とか自立しようと二人で便利屋立ち上げて頑張っている親子がだよ、こういう暮らし方はねえんじゃねえの。何があるのか知らないけどさ、一つの屋根の下に暮らすのが普通だと思うがね」


範子 「あの子は自分の事を責めているの」
三郎 「・・・なんで」
範子 「あの子は父親が死んだのは自分の所為だと思っているのよ」
三郎 「・・・でもオトウチャンは脳溢血で逝ったんだよね」
範子 「あの人の血圧を上げたのは自分だと思っているの」
三郎 「ハア・・血圧ね」
範子 「恭子は父親っ子でね、小さい頃から何かというとオトウチャンオトウチャンってくっついていた子だったの。ところが高校に入ってから反抗期になって、途端に手の平を返したようになってね」
三郎 「まあ、ごく自然な事なんじゃないかな」
範子 「そうなんだけど・・・そんな時の男親なんて傍目で見ててもみじめなもんでね、どうしてそうなったのか分からずただオロオロするばかり。その内、反動で可愛さ余って憎さが百倍さ、器用な人じゃなかったから頑なになって自分から手を差し伸べる事ができなかったの。・・わたしも何とかしようって頑張ったんだけどどうにも出来なかった。その後、恭子も恭子で反抗期を卒業してからも自分からきっかけを作る事が出来ずに、就職したのを機会にウチを出てしまったの」
三郎 「ああ、ソリャまずかったね。まあ、親子って思うほど簡単じゃねえからね」
範子 「そうなのよ。ウチの人は怒っちゃうし、恭子は寄り付かなくなるし、もうわたしの手には負えなくなった」
三郎 「だけどそんな親子なんて世間にはザラだけどな・・」
範子 「うん、それはね。ただ、お別れをちゃんと出来なかったからね」
三郎 「・・ああ、そうだったな」
範子 「そりゃ親子だもの、どんなに仲が悪くなったって生きていりゃ時期が来て何とかなるもんよ。でも・・・」
三郎 「そうなる前にって事か」


範子 「そう。・・・自分で働いて一人で住んで、うるさい親の居ない生活だもの。自由なもんよ。・・・土曜日だった、あの人が倒れた時は・・勿論あの子に携帯で連絡を取ったわ。でも通じない。あの子のアパートにも人をやった。でもいない。結局ウチの人は恭子を待たないで日曜日の朝に逝っちゃった。恭子が来たのは月曜日の通夜になってから」
三郎 「アッチャアー」


範子 「・・・後で聞いたら、会社の同僚と温泉に行ってたんだって。・・あの人が倒れた時間にホテルのパブでカラオケやってたんだって。・・・携帯が鳴ったのはわかったけどわたしからだから出なかったんだって言ってた」
三郎 「俺も親からの電話には面倒だから出なかったな」
範子 「同僚と温泉に行くのだって、カラオケをやるのだって、親からの電話に出ないことだってよくある事よ。・・・でもなぜあの時なの。・・・わたしの中にも変な感じが生まれちゃって、いろんな事がギコチナクなってしまった。・・暮らして行く為に始めた便利屋稼業にあの子が参加して、懸命になって働いている姿を見れば見る程、わたしの中にも何よ今更って思いが湧いて来るの。・・・あの子の所為だけじゃないのよ」
     沈黙。
範子 「あの子はここに住む資格がないと今も自分を責めているのよ」
三郎 「そうだったのか」

其処へ帰ったはずの恭子が慌てた様子で帰って来るのでした。
第三場ー2に続く。

撮影鏡田伸幸

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