JIL労働政策レポート Vol.4(2003.7) 『企業レベルの労働のフレキシビリティ』(PDF)より。
近年、正社員以外の労働力(非典型雇用と呼ばれるパートタイマーや派遣労働者、有期契約労働者など)を活用する企業が増加している。この研究の目的は、こうしたパート労働を中心とする非典型雇用が、いかなる目的で活用され、いかなる職場でいかなる仕事に従事し、いかなる雇用管理のもとで処遇されているのかを、主に聞き取りによる事例調査法により明らかにしようとするものである。
いわゆるサービス経済化を背景に就業構造が多様化し「パートタイム労働者(以下、パートと略)や派遣労働者など正社員以外の働き方をする労働者(以下「非典型」と略)の増加が顕著である。
目についたところをメモ。
3 先行研究のサーベイ~労働のフレキシビリティに関する研究
すでに年代から、欧米では労働のフレキシビリティに関する関心が高まった。長期にわたる経済パフォーマンスの停滞、市場における不確実性の高まり、急激な技術革新の進展、高い若年失業の長期化などの背景には、労働市場の硬直性(フレキシビリティの欠如)があり、それらの改善のためには政労使の各レベルで労働のフレキシビリティを高めていく必要がある。そういった認識が広がった。
(6)イノベーションからみた非典型雇用活用
非典型雇用の活用が、労働者自身の心理的な「隠れたコスト」を生み出す点とならんで、イノベーションと非典型雇用活用の関係に関する研究も見落とせない。
ストレイらは多様な形態の「flexible employment contract 」(柔軟な雇用契約者;以下、FECと略)と生産及びプロセスイノベーションとの関係を2700社の郵送調査と8社のケース研究により分析している(Storeyほか 2002) 。その結果、周辺層たるFECを拡大させすぎるとコア業務であるイノベーション機能に負の影響が予想されるという重要な含意が得られている。
これと同様の知見は、モスらの研究にもみられる(Moss ほか 2000)。モスらは「市場媒介型の非典型雇用の活用は短期的にはコストエフェクティブだが、長期的にはイノベーションの波に乗れない」ことを事例研究(保険会社と電機ハイテク企業)によって明らかにしている。
モスらの知見は、コスト圧力に対応すべく「内部労働市場を解体」するとやがて様々な問題を派生させ、結局イノベーションが決め手になる部門では内部労働市場の再構築が必要になるという重要な含意を教えている。
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