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ムース・パイサンド……。猫目と呼ばれた物魁使いの彼は、宇宙輸送公社が宇宙航路とする１２のリーフ（枝葉の方向）で鬼門の方角を司る鬼の鉄機部隊のキャプテン。人間の裏の顔を具現化したリバース・フェイスがヤヌスの鏡として、人間の後頭部に出現するのは、ある理由からだった。
１９９９年８月１１日のグランドクロス以降、地球が宇宙座標の原点としてその１２の方向性を地球を基準に座標とした宇宙紀元の始まり……。１２のリーフを航路とした宇宙物資輸送を担うＳＴＰＣ＝スペーストランスポートコーポレーションが輸送するのは、人員・物資、また外宇宙での異文明との接触で戦死した彼らの遺品だった……。
輸送物資の中に付随する未知なるウイルスも含まれる……。
宇宙風邪と呼ばれる伝染する癌は、唾液に含まれる癌の特定成分が咳等で伝染する時、空気中での感染ウイルスが、真空中でゲノム変異を繰り返し、転移ＲＮＡ＝トランスファーＲＮＡが自己増殖、その惑星の衛星軌道を周回するキメラ生物を創造していた。
そのキメラ生物を駆逐する物魁使いは、自分のリバースフェイスを具現化し、もう一つの顔を自分の後頭部に出現させ、そのヤヌスの鏡としてのもう一つの人格を凶暴化させる事で、キメラ生物との戦いを繰り広げていた。
その唾液で感染する癌の転移ＲＮＡを持っていた癌患者を救う為、衛星軌道上まで引き上げられたその癌ゲノムの増殖キメラを倒す。
遺伝子だけが増殖した自分にとっての悪魔がその人間の頭上、衛星軌道上に存在する時、癌患者の精神は崩壊してしまう……。
ムース・パイサンドの使命。癌ウイルスを駆逐する為の薔薇。南米のローズヒップは、通常のビタミンＣ含有量の１０００倍を持つ。そのローズヒップの１万倍のビタミンＣ含有量を持つ黄金色の薔薇が、ある財閥のご令嬢の結婚式のブーケにされて運ばれる事になっていた。
ＶＩＰ輸送のキャプテン、ムース・パイサンド。
そのゴールデンローズで作られたブーケ一つだけあれば、地球人類の癌を根絶する為のワクチンが製造出来る。
ブーケトスで投げられたそれが、踏みにじられた時……。
キャリーウェア（ＣＷ）と言う物資輸送装甲機体を製造するネイサン・コーポレーション＝ネイサン財閥。そのＣＷがキャンサーキメラと戦うのも、その癌キメラを作りだした癌患者の命を救う為だった……。
パイサンドが二人の猫人種、金猫のミルと黒猫のジルの二人のパイオツに挟まれながら、下呂温泉の素を使ったバスタブで湯あたりするのも、乙な映像ですわな……。
挟まれたいんだろッ！？
