どうぶつのこころ

動物の心について。サルとか類人猿とかにかたよる。個人的にフサオマキザルびいき。

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動物の権利のテロリズムと戦う

2006-11-30 21:24:44 | 動物福祉
A23 Nature Neuroscience (2006).
Editorial: Fighting animal rights terrorism.
Nature Neuroscience, 9, 1195. [link]

論説:動物の権利のテロリズムと戦う
動物の権利(アニマル・ライツ、animal rights)の主張者が家族を標的にしてから、最近ある研究者は、霊長類で研究するのをやめることを決断したと公表した。このような出来事は、神経科学者が動物関連企業テロリズム法(Animal Enterprise Terrorism Act)を支援する必要を強調する。
動物解放戦線(Animal Liberation Front)は2006年6月に、コロンビア大学ロサンジェルス校(UCLA)のリン・A・フェアバンクス(Lynn A. Fairbanks)をモロトフ・カクテルで攻撃しようとした(失敗に終わる)。それを知ったダリオ・L・リンガク(読み方に自信はありません。Dario L. Ringach)は8月に霊長類を使用した研究を中断することを公表した。

UCLA霊長類解放計画(UCLA Primate Freedom Project)によるのUCLAの神経科学者にたいする嫌がらせ。
・ウェブサイトに住所や電話番号を公開する。
・家のまえでデモをする。
・研究者の隣人にパンフレットを配布する。
・脅迫電話、脅迫電子メール。

ほかの団体で見られた嫌がらせ。
・拡声器を使用して大声で中傷する。
・呼び鈴を繰りかえし鳴らす。
・家族が在宅のときに窓や扉を破壊する。
・配偶者や子どもの名前、年齢、学校名などをウェブサイトで公開する。

リンガクにとっては時すでに遅いことだが、大学当局(UCLA)はより実効的な措置として民事訴訟を準備していると公表した。

不幸なことに、政治制度をとおしてではなく暴力や脅迫で他者の考え方を変えようとする動物の権利の活動家がいる。動物解放戦線のスポークスマンであるジェリー・ヴラサーク(Jerry Vlasak)によると、リンガクの件で暴力的方法が実効的だと認識したとのこと。

近年の動物の権利グループの行動では、法の抜け穴が利用されている。軽犯罪にしか相当しないような手段をとるので、法執行の当局や大学も対応に苦慮している。この動物の権利グループの戦術はイギリスから広まったが、イギリスは動物過激派をテロリズムと定義するため2005年重大組織犯罪及び警察法(Serious Organised Crime and Police Act 2005 [link])を制定し、そのような戦術に対抗する先鞭をつけた。

アメリカ合衆国では、2005年10月上院に、11月下院に、2005年動物関連企業テロリズム法(Animal Enterprise Terrorism Act of 2005)案が提出された。提出したのは共和党議員で、オクラホマ州の上院議員ジェイムズ・マウンテン・インホーフ(James Mountain Inhofe)およびウィスコンシン州の下院議員トマス・エヴァート・ペトリ(Thomas Evert Petri)だった。今までの法の抜け穴を塞ぎ、また厳罰化するものである。

先に述べたロサンジェルスでの活動では、メディアが思想内容ではなく戦術ばかりに注目し、大多数の活動家の思惑とは裏腹に、その活動は公共の支持を得られないでいる。とくに、フェアバンクスにたいする火炎瓶事件やリンガクの研究停止の決断公表をきっかけとして、民主党に所属するカリフォルニア州の上院議員ダイアン・ゴールドマン・バーマン・ファインスタイン(Dianne Goldman Berman Feinstein)が9月に共同発起人となったため、法案をとりまく状況が超党派化して可決の可能性は高まっている。

ネイチャー・ニューロサイエンス』は、会期終了のまえに投票にもちこむように上院議員や下院議員にはたらきかけるよう、アメリカ合衆国の神経科学者に勧めている。


以上、論説の内容を補足しつつまとめてみたが、動物の権利といえば、テロリズムではなく、まずピーター・アルバート・デイヴィド・シンガー(Peter Albert David Singer)が思い浮かぶ。リチャード・マーヴィン・ヘア(Richard Mervyn Hare)の弟子で、大型類人猿プロジェクト(Great Ape Project、GAP)の発起人のひとり。思想的な背景を著したものとしては『動物の解放』が有名だが、霊長類の研究をしている人にとっては、パオラ・カヴァリエリ(Paola Cavalieri)との共編纂である次の本のほうが馴染み深い。
Cavalieri, P. & Singer, P. (Eds.) (1993). The great ape project: Equality beyond humanity. London: Fourth Estate; New York: St. Martin's Griffin.
ISBN031211818X
カヴァリエリ, P. & シンガー, P. (Eds.) (2001). 大型類人猿の権利宣言. 京都: 昭和堂. (原著刊1993)
ISBN4812201098
次の記事以降でこの本の内容をまとめてみた。

記事1:カヴァリエリ+シンガー編『大型類人猿の権利宣言』1
記事2:カヴァリエリ+シンガー編『大型類人猿の権利宣言』2
記事3:デリダ+ルディネスコ「動物たちへの暴力」1
記事4:デリダ+ルディネスコ「動物たちへの暴力」2
デリダ & ルディネスコが長いのは、私がおもしろいと思ったから。比較認知科学の通常の研究からすれば与太話ですが。
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