前回(→こちら)の続き。
昭和55年夏の埼玉大会の決勝戦、川口工業対熊谷商業戦。
甲子園をかけた大一番だが、中盤で明らかなミスジャッジがなされてしまう。
本来なら盗塁成功していたのをアウトにされ、川口工業は猛抗議(高校野球ではホントはダメ)するも通らず、試合はそのまま続行されてしまう。
おさまらない川口工業は、怒りのプレーで猛アピール。
といっても、ここは球児らしく投手がマウンドで奮起とか、キャプテンが堂々とバットでお返しとか、そういったさわやかな展開にはならない。
今より、やや荒っぽかった昭和の時代のこと、「不良」「家庭内暴力」「校内暴力」ブームのころだ。ナインをはじめとする川口工業陣営は、もうちょっとばかしシンプルに、「バイオレンス」で訴えかけることにしたのである。
まず、誤審のあったプレーのあと、観客がグラウンドになだれこんでくる。
かつて1985年に阪神タイガースが優勝したとき、そのファンの熱狂ぶりがクローズアップされ、
「さすが関西のファンは激しいなあ」
なんて苦笑いしたことがあるけど、なんのことはない、どこに地区にもそういう人というのはいるものなのだ。
ましてや舞台は高校野球なのに、この狼藉。「さわやか」「フェアプレー精神」、そんなもん、どこの国の冷汁うどんや、と。
しかも、それをたたき出していたのが、川口工業の監督。
これに対して解説の人が、「立派ですよ」と称賛しておられましたが、監督さんは暴徒の首根っこをひっつかむわ、肩をどかどか押すわ、これまた荒いのだ。
ふつうなら、「ここはひとつ、わたしに免じて下がってください」とか頭を下げるのかと思いきや、
「とっとと出さらせ、このぼけなす!」
とでもいいたげな、「喧嘩上等」な空気感であった。完全に茹であがってます。
さわぎはこれで終わらない。今度はスタンドからバンバン物が投げられて、球場は騒然となり、実況のアナも困った様子。
さらには川口工業の「報復」も開始され、キャッチャーがホームで、すでにセーフになったランナーになぐりつけるようなタッチをかまし、ちょっと小競り合いになりかける。
攻撃陣も、セカンドにすべりこむ際、だれが見てもわかるくらいに足をあげてベースカバーにスパイク。いわゆる「殺人スライディング」を決めたりもする。
さらには、アウトを取ったあとの内野の球回しで、バッターにそのボールをぶつける(!)、スクイズでファーストがバッターランナーのみぞおちに一撃入れ昏倒させるなど、もうやりたい放題。
なにかもう、マンガみたいというか、ようこれで失格にならなかったなというようなラフプレーが、これでもかと連発されるのだ。
さすがは昔の工業高校、バイオレンスである。今なら炎上必至であろう。だれか止めろよという話だ。
で、この映像の途中あたりで確信したわけだ。
「あー、あの大会の元ネタって、これやったんや」。
実を言うと、クリックしてすぐ、学校名を見たときにピンとは来ていた。
なんといっても、「埼玉大会」で「熊谷」商業と川口「工業」。となれば、「大熊谷工業」と、すぐに結びつくというものですわな。
なるほど、野球漫画は好きだけど、現実の高校野球にさほどくわしいわけではない私からすると、あの暴力描写は意味不明で唐突に見えるだけで、連載当時読んでいた人は、
「あー、あんときのアレか」
なんてニヤニヤしていたのだろう。たしかに、マンガのネタにでもしたくなるような、おもしろシーンではあった。
高校野球の偽善性を嫌う人や、実際に高校時代野球部だった友人知人からは、
「現実の高校野球は、あんなさわやかなもんとちゃうけどな」
なんて話を、けっこう聞くこともあるけど、まあ言いたくなる気持ちもわからなくもない映像だ。
でもまあ、アイドルと同じで、現実とファンタジーがあまりにも乖離していながらも、「その虚構性が魅力」のジャンルともいえるかもしれないけど。
当時の高校球児の豪快なエピソードが知りたければ、愛甲猛さんの、『球界の野良犬』がおススメ。
やることなすこと無茶苦茶すぎて、逆に大爆笑の一冊です。
■おまけ マッドマックスな雰囲気バリバリの試合の模様は→こちらから
昭和55年夏の埼玉大会の決勝戦、川口工業対熊谷商業戦。
甲子園をかけた大一番だが、中盤で明らかなミスジャッジがなされてしまう。
本来なら盗塁成功していたのをアウトにされ、川口工業は猛抗議(高校野球ではホントはダメ)するも通らず、試合はそのまま続行されてしまう。
おさまらない川口工業は、怒りのプレーで猛アピール。
といっても、ここは球児らしく投手がマウンドで奮起とか、キャプテンが堂々とバットでお返しとか、そういったさわやかな展開にはならない。
今より、やや荒っぽかった昭和の時代のこと、「不良」「家庭内暴力」「校内暴力」ブームのころだ。ナインをはじめとする川口工業陣営は、もうちょっとばかしシンプルに、「バイオレンス」で訴えかけることにしたのである。
まず、誤審のあったプレーのあと、観客がグラウンドになだれこんでくる。
かつて1985年に阪神タイガースが優勝したとき、そのファンの熱狂ぶりがクローズアップされ、
「さすが関西のファンは激しいなあ」
なんて苦笑いしたことがあるけど、なんのことはない、どこに地区にもそういう人というのはいるものなのだ。
ましてや舞台は高校野球なのに、この狼藉。「さわやか」「フェアプレー精神」、そんなもん、どこの国の冷汁うどんや、と。
しかも、それをたたき出していたのが、川口工業の監督。
これに対して解説の人が、「立派ですよ」と称賛しておられましたが、監督さんは暴徒の首根っこをひっつかむわ、肩をどかどか押すわ、これまた荒いのだ。
ふつうなら、「ここはひとつ、わたしに免じて下がってください」とか頭を下げるのかと思いきや、
「とっとと出さらせ、このぼけなす!」
とでもいいたげな、「喧嘩上等」な空気感であった。完全に茹であがってます。
さわぎはこれで終わらない。今度はスタンドからバンバン物が投げられて、球場は騒然となり、実況のアナも困った様子。
さらには川口工業の「報復」も開始され、キャッチャーがホームで、すでにセーフになったランナーになぐりつけるようなタッチをかまし、ちょっと小競り合いになりかける。
攻撃陣も、セカンドにすべりこむ際、だれが見てもわかるくらいに足をあげてベースカバーにスパイク。いわゆる「殺人スライディング」を決めたりもする。
さらには、アウトを取ったあとの内野の球回しで、バッターにそのボールをぶつける(!)、スクイズでファーストがバッターランナーのみぞおちに一撃入れ昏倒させるなど、もうやりたい放題。
なにかもう、マンガみたいというか、ようこれで失格にならなかったなというようなラフプレーが、これでもかと連発されるのだ。
さすがは昔の工業高校、バイオレンスである。今なら炎上必至であろう。だれか止めろよという話だ。
で、この映像の途中あたりで確信したわけだ。
「あー、あの大会の元ネタって、これやったんや」。
実を言うと、クリックしてすぐ、学校名を見たときにピンとは来ていた。
なんといっても、「埼玉大会」で「熊谷」商業と川口「工業」。となれば、「大熊谷工業」と、すぐに結びつくというものですわな。
なるほど、野球漫画は好きだけど、現実の高校野球にさほどくわしいわけではない私からすると、あの暴力描写は意味不明で唐突に見えるだけで、連載当時読んでいた人は、
「あー、あんときのアレか」
なんてニヤニヤしていたのだろう。たしかに、マンガのネタにでもしたくなるような、おもしろシーンではあった。
高校野球の偽善性を嫌う人や、実際に高校時代野球部だった友人知人からは、
「現実の高校野球は、あんなさわやかなもんとちゃうけどな」
なんて話を、けっこう聞くこともあるけど、まあ言いたくなる気持ちもわからなくもない映像だ。
でもまあ、アイドルと同じで、現実とファンタジーがあまりにも乖離していながらも、「その虚構性が魅力」のジャンルともいえるかもしれないけど。
当時の高校球児の豪快なエピソードが知りたければ、愛甲猛さんの、『球界の野良犬』がおススメ。
やることなすこと無茶苦茶すぎて、逆に大爆笑の一冊です。
■おまけ マッドマックスな雰囲気バリバリの試合の模様は→こちらから
「川口工業」「熊谷商業」でたどり着きました。
この試合、私は、昨年の大阪桐蔭vs仙台育英の試合をyoutubeで見ていて、発見しました。
非常に面白かったです。
「ここから、川口工業の大逆襲がはじまる。」のくだりや、川口工業の監督が観客をつまみ出している「とっとと出さらせ、このぼけなす!」は言いえて妙だと思いました。(ほんと、そんな感じですよね)
コメントありがとうございます。
〉昨年の大阪桐蔭vs仙台育英の試合をyoutubeで見ていて
ありましたねえ。
私は学生スポーツにあまり幻想を持ってないので、「ああいうことも、あるんやろうなあ」くらいの印象ですけど、さすがにケガにつながるようなことはやめてほしいですね。
「どこまでが《スポーツマンシップに反する》行為で、どこまでが《かけひき》《暗黙の了解》なのか」
は人それぞれ意見はあると思いますけど、映像技術の発達した現在と、ああいうプレーは「時代性と合ってない」かもしれません。
ビデオ判定が当たり前になったら、もうできなくなりそうですし。
〉非常に面白かったです
ありがとうございます。
最初この記事にコメントが来たと知ったときは、埼玉の人からのおしかりかと、ひそかにドキドキしたりw
相撲やサッカーもそうですけど、こういう「暗部」は、部外者には「ひどい話や」とドン引きしたりしますけど、ファンの間では、「それもふくめての魅力」だったりするので、噛み合わないことが多いですよね。
特に高校野球は本文でも書きましたけど、「現実」と「神格化された部分」に差が大きい競技なので、議論も大変そうです。