プレムダンの鉄板の大きなドアから入り、門番に挨拶すると、私とべッティーは止められなかったが、ウドルと子は止めれらてしまった。
シスターから許可はもらっていると言ってどうにか一緒に入れてもらえた。
これも彼の仕事であると思いながら、慣れない場所に来たウドルは緊張し始めていたので「大丈夫、心配しなくて良い」と私は言った。
女性病棟の入り口のところで二人を待たせ、私は責任者のシスターに会いに行った。
シスターは忙しくマーシーたちに指示をしているところだった。
私がシスターに声を掛け、挨拶すると、少し怪訝な顔をしていた。
「デナダースはいますか?」と聞くと、「彼女は死んだ」とシスターは答えた。
「いつですか?」
「もう一週間前です」
私が愕然となり、言葉に詰まっていると、「あなたに連絡を取ろうと思っても、ケイタイの番号も知らなくて連絡は出来なかった。前、働ていたクレアはちゃんと番号を教えていたから、患者に何かあった時は連絡することが出来たけど・・・」とシスターは言った。
私は私にほんとうに連絡をする必要があれば、マザーハウス{マザーテレサの修道会の本部}に電話をすれば必ず連絡は取れるはず、しかし、そこまではしないのか、と思いながら、今はこの感情は必要ではない、過去を変えられる訳ではない、その思いは口先から出すことをすぐに辞めた。
「分かりました。次からシスターにボランティアの電話番号は伝えるようにします。デナーダスの友達と子を今日は連れて来ているんです」
「どうします?あなたがデナーダスの死を彼女らに伝えますか?それとも私が伝えた方が良いですか?」
私は私から伝えても良いとも考えたが、言葉が確実に通じるシスターから、デナーダスの死の時を知り、ケアをしていたシスターから伝えてもらった方が良いと考え、「シスターから伝えてください」と答えた。
シスターと私はウドルのところまで一緒に行き、私はウドルをシスターに紹介した。
シスターは優しくデナーダスの死のことをウドルに伝え始めた。
ウドルはシスターに微笑み、挨拶をした後、デナーダスの死を知ると落したグラスが割れるように泣き崩れた。
子は訳も分からず、母親が泣きだした悲嘆の感情を受け、ウドルの着ていたサリーの端をつかみ、ウドルにくっついたままだった。
私は泣き崩れるウドルを真正面から見ていた、隣にいたべッティーのことは目には入らなかった。
しばらくシスターはウドルを慰めてくれた。
シスターが去った後もウドルは泣き止まなかった。
べッティーが小さな声で私に言った「テツ、チャペルに行きたいんだけど」と。
私はすぐにべッティーがチャペルで祈りたい、もしくは泣きたいと思っていたことを感じたが、「べッティー、いまはこのウドルの傍にいなさい」と言った。
私たちが何も出来ないのではない、このいま、ウドルの哀しみを分かち合うことが出来るのである。
私たちは私たちの感情を超えなくてはならない、平和の道具、癒しの道具として、この身を使うことをすることがマザーの教えであることをべッティーに分かってほしかった。
べッティーは「イエス」と小さな声で答えてくれた。
{つづく}