遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

暁の宇品

2022年09月20日 16時16分13秒 | 読書

        暁の宇品

           陸軍船舶司令官たちのヒロシマ     

                        堀川惠子(著)2021年7月発行

  満州事変から太平洋戦争へと無謀にも戦地を拡大させ、莫大な犠牲者を出し、

  国を疲弊させ、ヒロシマ・ナガサキの惨事を招くこととなる旧日本軍参謀本部の

  無知無能ぶりが、本書で船舶、兵站の史実が語られることにより、

  改めて憤りと再びの絶望を味わうこととなった。

  根気よく古い数少ない資料を探し、当時を知る高齢の船舶関係者や子孫を訪ね

  丁寧に聞き取り作業を重ねた著者には本当に敬服しますし、

  調べ上げた史実をこうして本にまとめられたことに感謝あるのみ。

  日本人として、絶対知っておくべき大切な歴史なのですから。

  昨今、当然の如く防衛費増額が声高に語られていますが、

  その前に、日本の未来図をどう描き、そのために何をどうしていくべきか・・・

  を、世界を見渡し、しっかり見極め、考え、平時に議論し確認しておくことが

  まずは大事。

  莫大な資料や貴重な証言を元に、日本のため、兵士のため、動員された船乗りのため、

  私利私欲とは縁なく必死に行動し上層部に進言し続けた陸軍船舶司令官達の姿が

  淡々と描かれており「こんな立派な日本人もいたのに、、、」と無念でたまりません。

  しっかり正しく歴史を振り返るべきと思いました。

     わがまま母

 — 講談社案内文 —

 広島の軍港・宇品に置かれた、陸軍船舶司令部。
 船員や工員、軍属を含め30万人に及ぶ巨大な部隊で、1000隻以上の大型輸送船を有し、

 兵隊を戦地へ運ぶだけでなく、補給と兵站を一手に担い、「暁部隊」の名前で親しまれた。
 宇品港を多数の船舶が埋め尽くしただけでなく、司令部の周辺には兵器を生産する工場や倉庫が

 林立し、鉄道の線路が引かれて日々物資が行きかった。いわば、日本軍の心臓部だったのである。
 日清戦争時、陸軍運輸通信部として小所帯で発足した組織は、戦線の拡大に伴い膨張に膨張を重ね、

「船舶の神」と言われた名司令官によってさらに強化された。
 とくに昭和7年の第一次上海事変では鮮やかな上陸作戦を成功させ、「近代上陸戦の嚆矢」

 として世界的に注目された。
 しかし太平洋戦争開戦の1年半前、宇品を率いた「船舶の神」は志なかばで退役を余儀なくされる。

 昭和16年、日本軍の真珠湾攻撃によって始まった太平洋戦争は、広大な太平洋から南アジアまで

 を戦域とする「補給の戦争」となった。
 膨大な量の船舶を建造し、大量の兵士や物資を続々と戦線に送り込んだアメリカ軍に対し、

 日本の参謀本部では輸送や兵站を一段下に見る風潮があった。
 その象徴となったのが、ソロモン諸島・ガダルカナルの戦いである。
 アメリカ軍は大量の兵員、物資を島に送り込む一方、ガダルカナルに向かう日本の輸送船に

 狙いを定め、的確に沈めた。
 対する日本軍は、兵器はおろか満足に糧秣さえ届けることができず、取り残された兵士は極端な

 餓えに苦しみ、ガダルカナルは餓える島=「餓島」となった。

 そして、昭和20年8月6日。
 悲劇に見舞われた広島の街で、いちはやく罹災者救助に奔走したのは、補給を任務とする

 宇品の暁部隊だった――。
 軍都・広島の軍港・宇品の50年を、3人の司令官の生きざまを軸に描き出す、

 圧巻のスケールと人間ドラマ。
 多数の名作ノンフィクションを発表してきた著者渾身の新たなる傑作。

 

 以下 「好書好日」より

堀川惠子さん「暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ」インタビュー 発掘した史実が語る重さ

 読ませる技術もさることながら、一行一行を膨大な文献の渉猟と綿密な取材が支えている。

 著者の作品の常だが、本作も例外ではない。

 広島市の宇品には、かつて「暁部隊」と呼ばれた陸軍船舶司令部が置かれ、

 軍事の要諦(よう・てい)である兵站(へい・たん)を担った。

 序章を締める一文が本書の何たるかを端的に伝える。

 「旧日本軍最大の輸送基地・宇品には、この国の過去と未来が凝縮されていた」

 海軍でなく陸軍が船舶輸送を担う意外な経緯は本書に詳しい。

 知られざる史料を発掘する手腕は健在で、「船舶の神」田尻昌次司令官や技師の市原健蔵ら

 魅力的な人物の群像劇が周到にして生き生きと描かれる。

 戦時、日本は「ナントカナル」で突き進んだ。輸送の死活的重要性を熟知し、

 先を危ぶむ田尻の声は届かず、直言すれば待っていたのは更迭である。

 耳に心地よい情報が上に集まり、さしたる吟味もなく判断が下され、あげく国は破滅に向かう。

 昔の話と思えないのは、臨場感あふれる筆致のせいばかりではない。

 英雄視も見下しもせず、著者はその時代を懸命に生きた無名の軍人たちを忠実によみがえらせている。
 「大きな歴史のダイナミズムに、個々の人生がシンクロした。田尻さんも市原さんも、

  書き手としての醍醐(だい・ご)味を感じさせる存在でした」

 宇品の主要任務は特攻に転じた。「小さなベニヤ板の特攻艇で出撃した」若者たち―

 ―読みながら胸が塞がれる。初の原爆はなぜ広島に投下されたか。

 その疑問に始まる物語は巻を措(お)く能(あた)わずであると同時に、

 読後に残されるものがあまりに重い。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あの図書館の彼女たち | トップ | デジタル・ファシズム »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書」カテゴリの最新記事