今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

宮古島・保良ミサイル弾薬庫の現在―500日もの座り込みを続ける保良の人々!

2021年03月22日 | 自衛隊南西シフト
宮古島・保良ミサイル弾薬庫の現在―500日もの座り込みを続ける保良の人々!



 500日の座り込みを続ける下地博盛さん夫妻! 

 僕は、一昨年10月に保良を訪れたときも、帰りは台風に直撃された! そして今年の保良住民集会の後も、台風の直撃!「嵐を呼ぶ男」になったのか?
 しかし、それにしても保良は暑い。海のすぐ側にありながら、カンカンの日照りだ。冬はすさまじい風が吹き荒れるというが、山がまったくないこの地特有の環境だろう。

 この真夏の、灼熱の炎天下をものともせず、「ミサイル・弾薬庫反対!住民の会」共同代表の、下地博盛さんと連れ合いの薫さんのお二人は、なんと300日もの座り込みを続けている。朝早くから夕方までー。もちろん、地域住民の方々も座り込みには参加されるし、宮古島市内はもとより本土からも応援の人々は駆けつける。だが、日によっては二人きりになろうとも夫妻は、連日座り込み、ミサイル弾薬庫工事の車両の出入りを止めているのだ。

雨の日も、風の日も「絶対に危険なミサイル弾薬庫造りを許さない」と、基地建設を阻む行動を続ける下地夫妻――。

 その下地博盛さんは、城辺(ぐすくべ)町役場に長らく勤め、保良の区長を3期、また宮古島市議会議員を務めた人で、ふだんは寡黙な人だが、風貌からも断固たる信念を感じる人だ。一方、連れ合いの薫さんは、明るく話し好き、ジョーク好きで、この暑さの中、工事入口に敷き詰められた鉄板の上で、卵焼きを作るという「イベント」もやったという。鉄板の上は50度以上はあったようだ(娘さんの茜さんは、当日の「実行委の学習会」の司会を務めるなど、家族ぐるみの闘い)。           

 保良ミサイル弾薬庫工事が始まったのは、一昨年10月7日、その4日前の10月3日に防衛省の地元説明会が強行された。「説明会」を住民はボイコットしたが、この説明会が工事着工のアリバイづくりであったことは明らかだ。

 凄まじいミサイル弾薬庫工事が進む保良 

 この工事が始まる1週間前、僕は地元住民の要請で保良・七又の住民集会に講師として参加したのだが、あれから1年、当時、深い鉱山跡には何もなかったが、この地はみるみるうちに整地され、もうミサイル弾薬庫の骨格が姿を現しつつある。                    

 防衛省から経産省への「設置承認申請書」によれば、ミサイル弾薬庫の工事は、現在、二棟が造られつつある(もう一棟は、土地買収の遅れという報道あり)。

上の写真は、ミサイル弾薬庫の1つで、左側の長い建築物が「防爆壁」(土堤)であり、右のビルのような構造物がミサイル弾薬庫の本体である。
これは、現場で見ると凄まじい大きさだ。現在進んでいる工事だけでも、ビルに例えると4階建ての高さだ。

「米軍基準」のミサイル弾薬庫!
 先の経産省への防衛省の「設置承認申請書」には、上の右図面が描かれているが(宮古島市民の斉藤美喜氏請求による情報公開文書)、この文書では「米軍基準」という文言が何度となく出てくる。

 この「米軍基準」ということと、文書に明記されている、ミサイル弾薬庫の「爆破実験」などを推定すると、おそらく自衛隊では、地対艦ミサイルの弾薬庫について「地上覆土式一級火薬庫」を造るのは初めてではないかということだ。奄美大島のミサイル弾薬庫も(未だ工事中)、北海道のミサイル連隊などで造られているミサイル弾薬庫も、すべてが「地中式弾薬庫」である!

 いつものことだが、防衛省・自衛隊は、この爆破実験でさえ、ほとんど墨塗で出してきた。しかし、ミサイル弾薬庫について、この文書が言うように「安全が証明された」とするなら、全文を明らかにすべきだろう。

 だが、実際のこのような「爆破実験」など机上の空論である。筆者は、かつて防衛大学校による「弾薬庫の爆破実験」を調査したことがあったが、わずか数キロのTNT火薬を詰めた、ミカン箱程度の大きさの箱を爆破しただけのものである。つまり、実証実験とするには、あまりにも爆破の規模が小さすぎるのだ。     

 一方、防衛省は従来、宮古島などの住民説明会でも、「ミサイル弾薬庫の爆破試験を行ったことはない」と明言し取り繕っていた。

 そしてまた、経産省においても「地対艦ミサイルなどの爆発物は火薬類取締法ではそもそも想定していない」というのであり、地対艦ミサイルなどの高度の爆発物の実証実験はなされていないのだ。

 こうした、防衛省は、住民らがもっとも怖れる、ミサイル弾薬庫の「保安距離」をひた隠しにして、「自衛隊を信頼しなさい」と言うばかりである。

 すでに、拙著『要塞化する琉球弧―怖るべきミサイル戦争の実験場!』、動画「軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢―宮古島編」(part2)などで、この保安距離の問題は詳しく述べてきたが、ミサイル弾薬庫が爆発したとき、住民の危険はとてつもなく、凄まじいものになるのだ!     
 そして、「保良ミサイル弾薬庫」は、もう一つの「ミサイル基地」となる!

 「宮古島訓練場火薬庫」(仮称)という駐屯地! 

 現在の保良ミサイル弾薬庫の正式名称は、「陸自宮古島訓練場火薬庫」(仮)とされている。変な名前の基地だ! 全国でこんな名前の基地はない。おそらく開設後には、名称を変えてくるだろう。たぶん「宮古島駐屯地保良分屯地」となる。となると、この弾薬庫は、単なる「訓練場」でもなく、部隊が常駐する「ミサイル基地」となるということだ。

 まず問題は、「廠舎」という常駐隊舎の建設である。防衛省の住民に出された説明書によれば、この保良地区には、弾薬庫・射撃場・整備工場・訓練場・廠舎などを造るとされている。             

 まず、ここに明記される廠舎とは何か? 旧日本軍では、廠舎というと古ぼけた、木造の造りの、演習などで一時的に滞在する宿舎のことを言う。自衛隊でも、長らくは同様の、例えば「かまぼこ型」の古い木造造りが多かった。だが、近年では廠舎には、隊員宿舎だけでなく、大浴場やコンビニさえも置かれた、もう一つの隊舎(基地)となっている(下は建設中の北海道・然別の廠舎)。                       

 つまり、「保良基地」は、宮古島・千代田地区にある警備部隊とは、別の常駐基地であり、そういうものとして造られようとしているということだ。

 訓練場という一大演習場 

 もう一つの問題は、保良基地がミサイル弾薬庫・射撃場・廠舎を中心に造られながら、一大訓練場としても造られようとしていることだ。上の防衛省図面をみてほしい。ミサイル弾薬庫の上・下の部分が「訓練場」として明記されている。

 宮古島駐屯地には、ただ今現在、訓練場が整備されていない。陸自は、空自の訓練場を時々借りるという状態だ。この訓練場を保良に造るというのは当初からの計画だが、問題はこの訓練場(演習場)は、普通科部隊の戦闘訓練に留まらない、対艦・対空ミサイル部隊の訓練場・演習場になりうる、ということだ。

 例えば、対艦・対空ミサイル部隊の実射・実弾演習は、射程の問題などで現在、国内では行っておらず、アメリカ本土の演習場を借りて行われている。しかし、ミサイルの実弾演習ではなく、「模擬弾の演習」などは、国内でも行われている。保良に地対艦ミサイル部隊が配備されるとすれば、この模擬弾の演習も行われることになり、非常に危険な状態が生じることになるのだ(保良ミサイル基地と訓練場全図。上下の敷地が訓練場・演習場。全体では19㏊だが、間違いなく演習場は買収され、拡大されていく。沖縄県環境アセスメント逃れのために現在、19㏊にきり縮められた!!)。                           

 保良基地は「地対艦ミサイル基地」となる!

 さて、今ひとつの、決定的重要問題は、保良ミサイル基地が、将来、間違いなく宮古島の地対艦ミサイル部隊の常駐基地として造られていく、ということだ。

 これを例えば、奄美大島に建設・配備された地対艦・地対空ミサイル基地と対比してみてみよう。奄美では、この地の北・大熊地区に地対空ミサイル部隊(+警備部隊)が配備され、遠く離れた奄美の南に瀬戸内町に、地対艦ミサイル部隊(+警備部隊)が配備された。
              

 これを見ると、全国的にも同様だが、1つの基地に指揮系統も作戦運用も完全に異なる部隊が配備されることはない、ということだ。これは、石垣島配備の部隊も、将来、同様になるだろう(拙著『要塞化する琉球弧』の掲載資料には、石垣空港・北の候補地の詳細図面もある)。        

 地対艦ミサイル、地対空ミサイルの作戦運用においては、陸海空の統合運用が決定的となる。いわゆる「友軍相撃」(同士討ち)を避けるためであり、無駄撃ちを避けるためでもある。

 保良住民らが座り込みを続ける道路のすぐ下・脇には沖縄島と宮古島を結ぶ宮古海峡が広がっている。周りには、南国の島々特有のリーフは全くなく、水深のある広大な海峡が広がっている。

 自衛隊が、地対空ミサイル部隊の配備について、この保良の位置・地形を選んだことには、地対艦ミサイルの作戦運用からすると不可欠だったということか。                 

 この宮古海峡は、第1列島線のチョークポイントと言われ、現在でも中国の艦船・航空機が頻繁に行き来している。もちろん、中国脅威論者が騒ぐ必要もない、この海峡は排他的経済水域(領海ではなく自由通行可)である。

 宮古島・保良地域が、日米の南西シフト態勢=「島嶼戦争」=海峡戦争(通峡阻止作戦)、とりわけミサイル戦争の「絶好の地域」とされたのだ。だから一旦、宮古島・保良に地対艦ミサイル部隊の弾薬庫、部隊配備を許容したとするなら、次から次へと、日米のミサイル部隊がやってくるのだ。                                 すでに、自衛隊は「高速滑空ミサイル」(ブロック1・2025年度配備)、「極高速滑空ミサイル」(ブロック2・2028年度配備ー「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」[2018年新防衛大綱策定])を決定している。もし、この高速滑空ミサイル部隊の配備が進行したとするなら、宮古島(+沖縄島)配備は、不可避となるだろう。    

 そしてまた、米軍の海兵隊、陸軍部隊の地対艦ミサイル部隊を中心とした部隊配備ー「島嶼戦争」部隊の配備が決定されつつある。この第1列島線=琉球弧が、とりわけ宮古島が、その最大のミサイル戦争の戦場とされようとしているのだ(参照 YouTube「軍事ジャーナリスト・小西 誠が暴く南西シフト態勢―アメリカのアジア戦略と日米軍の「島嶼戦争」(part6))。

 この事態を座して待つだけなのか、それとも連日の猛暑の中で闘いつづける保良住民(→宮古島住民・石垣島住民ら)とともに、これを食い止めるべく闘うのか、今ギリギリのところで全ての「本土民衆」は突きつけられているのだ。

 今なら、まだ、保良ミサイル弾薬庫は止められる!         

 宮古島駐屯地に配備されているのは、ミサイル弾体のない、キャニスターだけの、「空鉄砲」の対艦・対空ミサイル部隊だ。宮古島ミサイル基地は、未だ不完全な、未完成の基地なのだ!
(これはブログ「note」からの転載[2020/8])


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