京都社会保障推進協議会ブログ

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京都の子どもをめぐる最新の情勢学習会を開きました

2011年11月17日 11時38分50秒 | 学習会報告

子どもをめぐる最新の情勢を学習・討論しました

「保育所の待機児問題・最低基準の条例化・障害児の支援」などをテーマに 

(全体のまとめを報告する立命館大学峰島厚さん)

 京都の子どもたちをめぐる環境はどうなっているのか?最新の情勢を各分野の専門家から報告し、子どもを守り、育てていくにはどうすればいいのかを考える第一弾として、10月29日、ラボール京都で「京都の子どもをめぐる最新の情勢学習会」を開きました。土曜日の夜にも拘らず45人の参加で、熱心に論議してこれからの運動に大きな弾みとなりました。

1.保育所の待機児問題  藤井修さん(たかつかさ保育園長)

  学習会は、子ども達の保育・療育をよくする会の池添さんの司会で始まり、最初に挨拶に立った京都社保協事務局長の南さんは、国会でTPPが大問題になっているが、子ども・子育て新システムも併行して進められており、知らないまま成立していたということになりかねないので、しっかり声をあげていくことが大事。この学習会を契機に子どものいのち、育ち、暮らしを守るネットワークを立ち上げ、京都の子どもをどう守っていくか、育てていくか大人がどう関わっていくかに取り組む、今日はその第一歩だと強調しました。以下、各報告内容の概略を掲載します。

現在、京都市には保育園が225カ園あるが、どの保育園も定員を超過して保育している。定員は23,000人だが定員以外に2,000人以上入れている。最低基準があるのに、なぜ京都はこうなっているかというと、京都市は民間保育園の総面積を4.5㎡で割る形で収容人数を推定しているようで職員の休憩室や倉庫なども含めて計算しているので、私の園でいうと元の定員は120人だが189人まで詰め込めるということになる。なぜ、適正な規模に戻さないのかというと、設立理念の地域要求に応えるためにマンパワーを肥大させた結果、認定外保育士などの形で市の補助の無い職員の分を定員外の需要に応える形で収入を確保するやり方をしているから。これだけ詰め込むと、1:15では事故やケンカというものが起きているし、職員間の意思疎通が困難、事務量の増大など弊害も出ている。なぜこんなに過密かというと、京都市が定員外入所の緩和で、詰め込むだけ詰め込めという政策的な面もあるし、様々な理由でとにかく入りたいとの申請あれば入れるという制限がない状態。園のスローガンは進取の気性を絶やさず保育にあたろう、最低基準の見直しこそが必要な保育改革だということで、努力している。

 続いてフロアから澤田さん(新日本婦人の会)が3年前から「保育所に入りたいママの会」を立ち上げ、待機児童解消に取り組んでいる経験を報告、①保育所に入りたいという相談をするところが福祉事務所しかない、②お母さんたちは入れるか入れないかの保活(就活や婚活と同じ)の中で、働くことの誇りを傷つけられていく、③1歳児で入れないので、みんな頑張って0歳で4月に入れようとすることで女性が勝ち取ってきた産休・育休(3年)の権利をみんな放棄している、④運動の中で昨年予算が前年の3倍に。評価はいろいろあるがこれで入れた人がいることはうれしい、⑤今年もスタートしたが13人あふれていて、取り組む。

2.最低基準の条例化を考える 藤井伸生さん(京都保育運動連絡会長)

 待機児童の問題では、保育所に入れないのは児童福祉法24条に違反している。法律に違反しているから京都市は保育所を作らねばならない。他の都市では裁判してほとんど勝利している。そんな運動をつくれる力を持ってほしい。4月に「地域主権改革推進一括法」が成立し、厚生省令で定められていた保育所設置基準の最低基準を自治体に委任するという法律。これは今でも子どもを詰め込んでいるのに、もっと詰め込めという条例。来年4月実施・運用になるが、1年間の経過措置ある。保育所だけでなく児童福祉施設・児童養護施設・高齢者・介護・障害者など全ての福祉施設に適用される。他の分野と協力してこんな緩やかな基準でいいのかという運動を起こさないと大変なことになる。保育所では①現行②標準(緩和してもよい)③参酌基準(参考程度)の3つの基準に分けられ、京都市は職員配置は議会で現行維持公約、施設設備は標準に、食堂が最低基準に入ってない、ホールや足洗い場なども基準に入れてほしい。保育内容は給食が3歳以上は外部搬入可能になっているが、自園・直営方式にしてほしい。管理運営では新システムは、事務所が無くてもできる、非営利法人にするべき、などモデル条例案を提案しました。

3.障害児の支援について 池添素さん(子ども達の保育・療育をよくする会)

 来年4月から障害児支援の仕組みが大きく変わる。支援の強化とか相談支援体制の充実を謳っているが、利用契約・応益負担・日額報酬の仕組みは無くならない。何が変わるかというと、児童ディサービスが児童福祉法に再編入され、既存の障害児施設の機能と体系・名称が大幅に変わる。児童福祉法も①肢体不自由、知的障害、難聴幼児、児童ディなど無くなり「児童発達支援」に再編、②地域支援の強化(保育証等訪問支援)、③府から市町村に権限移譲(児童相談所の関与無くなる)、④在宅で通所利用する福祉サービスの全てに関る「障害児相談支援事業」を創設など。保育所等訪問支援とは、新システムと同じく個別給付で、直接国から個人にかねが出る。もうひとつの問題は支援決定プロセスで大幅に変わる。サービス等利用計画案を持っていかないと契約できない。実態に合わせた支援スステムを私たちの手でつくるネットワークづくりをと強調しました。

 この後、自治労連の佐藤さんから府内自治体の最低基準と実態について報告、福保労の玉木さんから基準のない児童館の現状について報告。質問を受けたのち立命館大学の峰島厚さんが全体のまとめを発言されました。

4.全体のまとめとコメント 峰島厚さん(立命館大学教授)

 全体の動きを見ておく必要ある。社会保障と税一体改革は昨年12月頃から動きがあって、大震災で加速された。復興は所得税・法人税で、それと併行して社会保障改革推進本部がつくられた。消費税を10%にすると言っているが、社会保障改革に使われるのは1%で、良くなると思われているがそうではなく実際には医療窓口負担を増やす、年金の支給年齢を68歳まで繰り下げるなど、全般的に社会保障を削る。1%試算の根拠は社会保障費の自然増を1%に抑えるということ、例えば障害者の介護保険への合併とか保育も介護保険に吸収させる、それの第1弾が子ども新システム。

 障害者は自立支援法を廃止して総合福祉法をつくる。これは応益負担を無くすことを明記、日額払いでなく80%は基本報酬で実現しようとなっている。しかし、一方で介護保険がうまくいっているので、子どもも介護保険のようにしてしまえば、残るは障害者だけで孤立させられるので、バラバラでなく力を合わせることが大切。野田政権は総合福祉法をつくる気は全然ない。

・新システムになったら、待機児童がなくなると思われているが逆だ。保育時間がお母さんの働く時間で決まるので今、毎日来ている    子どもたちがかなり追い出される。利用契約制度になると待機児という概念が無くなるので、保育要求として待機児を意図的に保育につなげる運動が大事。

・新システムが入ってくると最低基準という言葉が無くなる。要件を満たしていればどんな事業所でもかまわない「指定基準」というものが規制緩和のときによく使われる。もう一つは常勤職員の配置がほとんど無くなる、常勤換算でよいということで、非常勤が常勤に置き換わる。それに伴い人件費の補助金単価も低くなり、基準どおりやっても補助金は減る。

・来年は児童福祉法が変わって、自分で保育所を探して契約しなければならなくなる。親として保育が必要という認識がないと置いていかれる。保育だけに目を向けるのでなくその背景に何があるか大きく考え、輪を大きくしていく運動を創造的に取り組んでいくことが大切。


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