ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

あべのハルカズBAR 176ページ目  50数頭の白い熊野牛に

2014-11-13 14:12:59 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【176ページ】



 晴数は、牧場の遠くから双眼鏡で熊野牛が記者達の前に集められて

いるのを確認すると、軽四トラックに戻って、白色ペンキ缶を覆っていた

カバーを運転席方面に取り寄せた。


 晴数は、白色ペンキ缶30個の蓋を取り外して、呪文を唱えると、

白色のペンキが渦を巻きながら立ち上がった。

そして、それらはつむじ風のようになり、熊野牛に向かって行った。


 メディア関係のカメラマン達が、熊野牛の撮影をしていた時、記者の

一人が叫んだ!


「あっ、あれは何だ!」


 いくつもの白いつむじ風のようなものが向かって来ていたのだ。

記者の叫び声に驚いて、全員が彼の指さす方を見た。


「あっ!」、「おっ!」と絶句するだけであった。


 それらの白いつむじ風は、熊野牛に近づいてくると、二手に分かれて

熊野牛を取り囲むようにして襲いかかった。

50頭を超える熊野牛は、白いつむじ風の中に隠れて姿が見えなくなる。

数分が経つと、白いつむじ風は消えて、50数頭の白い熊野牛が現れた。

鬼塚社長やメディア関係者は、呆然と眺めていただけであった。


 一頭の白い熊野牛が、彼らの前にゆっくり近づき、そして牧場のフェンスに

沿って歩き、向きを八鬼山の方へ変え、歩きだした。

やがてその白い熊野牛は、山道を登っていくように空中を歩いて消えた。




白い牛をおいかけて
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