ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

あべのハルカズBAR 95ページ目  ネズミの相談 

2014-07-16 07:43:38 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【95ページ】



 朝比奈は、チェイサーの水を飲み干す。

ママの陽菜は、チェイサーのグラスを手に取り、水を

注ぎ、彼の前に置く。


「ママの知人は、他にも何か言っていた?」

「『ネズミの相談』と『三匹のこぶた』の話をしていたわ」


 朝比奈はオーヘントッシャン21年のグラスを手に取り、

一口含む。

長期熟成された深い香りと味が口中に広がった。


「『ネズミの相談』って、ネズミ達が、猫のせいでいつもひどいめに

あわされていて、何とかしようと集まって相談するイソッフ寓話だね?」



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 陽菜は、微笑みながら頷く。


「その中の一匹が『猫が来たら、すぐわかるように猫の首に鈴をつけよう』
と提案し、他のネズミ達も名案だと賛成する話だ」


朝比奈は、再びオーヘントッシャン21年のグラスを手に取り、それを

一気に飲み干す。


「しかし、誰が猫の首に鈴をつけに行くかとなると、誰もその役を買って
出る者はいなかった。

いくら素晴らしい案でも実行できなければ絵に描いた餅であり、無意味

だと言っている・・・・」


 陽菜は棚から一本のウイスキーを取り出した。

あべのハルカズBAR 94ページ目  国民が目覚め始めたきっかけ 

2014-07-16 06:56:35 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【94ページ】



 陽菜は、オーヘントッシャン21年をグラスに注ぎ、朝比奈の前に

置いた。


「平和新聞の愛読者の私の知人は、読者が悪い三猿の呪縛から

逃れるきっかけになる出来事があったと述べています。」

「その事件とは、尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件のこと?」

「ええ、そうです。

中国漁船が、海上保安庁の巡視船に何度も体当たりする映像が

ニュースとして流れ、中国漁船の船長が起訴されず送還され、

英雄視されるのを見て、国を守るという意識に目覚め始めたのです。」



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 朝比奈は、オーヘントッシャン21年のグラスを手に取り、口に含む。


「オーヘントッシャンの酒名はゲール語で『野原の片隅』という意味だ

そうですが、お味はどうですか?」

「いや、これは片隅のウイスキーではなく、最高級品のウイスキー

と言えるね」

「そして目覚めた国民は行動を起こす。

東京都が尖閣諸島購入の寄付金を募ったところ14億円も

寄付金が集まったのです。

今まで、憲法九条を守ることが平和を守ることだと固く信じ、

国や国民を守るということから目を閉じ、耳を塞ぎ、口を

押さえていた人々に変化が出始めたのです。

私の知人が嘆くのは、それなのに平和新聞はまだ悪い

三猿のままであると・・・・」