ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

あべのハルカズBAR 81ページ目  痴漢を捕まえる  

2014-07-03 22:07:51 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【81ページ】



 コンビニ平和がオープンして4日目の午前になった。

前日に万引強盗があったので、店長の建前は、夜中の

勤務にシフトした。

 12時が少し回った頃、店の外から、「助けてー」と女性の

悲鳴が聞こえてきた。

店内にいた若者二人が、ビールやつまみの入った買い物カゴを床に

放り投げ、助けに行こうとした。


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レジ前を走り過ぎる時、建前に一緒に行こうと目で合図した。

しかし彼は頭を振った。

若者二人は、軽蔑の視線を彼に送ると、すぐ外に飛び出して

行った。


 店長の建前は、憲法の前文と第九条の額を見つめながら

呟いだ。


「私は平和主義者だから、人を助けるためでも争うことができないのだ。」


 しばらくして、先ほどの若者二人が、女性を助け、痴漢を捕まえるという

お手柄を立て、コンビニ平和に戻って来た。

彼らは、床から買い物カゴを拾い上げ、レジに持って行った。

店長の建前がその商品をスキャンしている間、憲法の前文を

読み上げる。


「日本国民は・・・平和を維持し・・・名誉ある地位を占めたいと思ふ。」

あべのハルカズBAR 80ページ目  残飯に野良猫群る  

2014-07-03 19:48:58 | あべのハルカズBAR1 四話 完
【80ページ】



 店長の建前は、午前3時半に店に着いた。

従業員用の駐車場から、車を降りて、店の前に立つと、

野良猫がお客の食べ散らかした残飯に群がっていた。


「お前らを追い払うのは後だ!」


 建前はイラつきながら、野良猫に言葉を吐き捨てたが、

思い直して、頭を振った。


「いや、平和的に話し合って退去してもらうのだ」



 店内に入ると、パートからコンビニ強盗の説明を受けた。

そして、やさしく、冷静にコンビニ強盗を止めるように説得

したことを褒めた。


「なによりもパートさんの身の安全が最優先です。

その上で、相手のことを思って、犯罪に走るのを

止めるように話す機会があればそうしてください。

店の為ではなく、やさしく冷静に彼の為だと話かけると、

この人に迷惑をかけたくないと思って、再犯を防ぐことができると

思います。」


 建前はパート女性との話を終えると、箒と塵取りとゴミ袋を

持って、野良猫が集まっていた所に行く。


「野良猫さん、お食事中ですが、掃除させて頂きます。

速やかに、この場所から退去お願い致します。」


 警戒心のある野良猫は、建前が近づくと逃げ散った。


「野良猫でも話せば判るのだ」と満足そうに頷いた。




猫びより 2014年 07月号 [雑誌]
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