ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 86ページ目 ロワール川巡り③ 

2013-05-04 21:24:57 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【86ページ】


 マスターはスライスされた乾燥肉のようなものを皿に盛って、二人に

出した。


「どうぞ食べてみてください」


和音と良子はフォークで刺して、口に入れた。


「美味しいわ! ビーフジャッキーかしら?」

「うまいが・・・。このまま食べるよりお酒のあてにしたいね!

マスター、ブルグイユの赤をお願いします。」


 ロワールのトゥーレーヌ地区の赤ワインはシノンが有名である。

ブルグイユもトゥーレーヌの赤ワインだが、シノンのような歴史的

逸話がないのであまり知られていない。


「和さんはこれ何の肉か判ったの?」

「さいぼし」

「ええ? さい干し? サイの肉を干したもの?」


 和音は笑っているだけで、否定も肯定もしなかった。


「和さんのいじわる! マスター、さいぼしって何?」

「馬肉を天日干しか燻製にしたものです。

馬肉の代わりに獣肉の場合もあるので、サイの肉でも間違いではないかも。」

「和さんと違って、マスターはやさしいわ!」


 良子はほっぺを膨らませてちょっとすねて見せた。


「さあ、さいぼしでブルグイユを飲んでみよう」と和音が言った。