ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 39ページ目 手の平のブドウのあざ   

2013-02-12 21:15:33 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【39ページ】


 良子は箱からスミレのグラスを取り出し、見つめた。


「このスミレのデザインのところにメルロのデザインですよね?」

「そうです。」


 良子はワイングラスを逆さまにしたり、横にしたりして見た。


「素敵なグラスというだけだわ!

どうしてそれがワイングラスとの対決になるの?」


「そのメルロはシャトー・ペトリュスのブドウを取り寄せ、それを

モデルとして描いたそうだ。その作者はブドウの粒を口に含みながら又実際に

シャトー・ペトリュスを飲みながらブドウのデザインに没頭し、ペトリュスの気を

吹き込んだのです。」


 和音は、手の平のあざを良子に見せながら、話を続けた。


「テイスティング対決のワインは、メルロのグラスに注がれるとペトリュスのように

感じてしまったのです。 ペトリュスの発する気を防ぐため・・・・・・」


「手の平で?」

「そう、手の平でワイングラスを覆って気を封じ込めたというか・・・・」


 和音は、手の平のブドウを見つめた。

「手の平にブドウの気を吸い取ってしまった!」


 良子は、驚いた表情を見せながら言った。


「それ以来、このペトリュスのブドウに悩まされている。

ボルドーのワインを飲むと、すべてペトリュスに感じてしまうのです。」