ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 35ページ目 手の平のブドウのあざ   

2013-02-06 23:04:23 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【35ページ】


「マスター、良子さんにもシャトー・パヴィを入れてあげて!」

「シャトー・パヴィ? サン・テミリオンの?」

「そうらしい。 私にはポムロールのシャトー・ペトリュスと感じたのだが・・・」


 マスターはシャトー・パヴィ2001年をグラスに注いで、良子の前に置いた。

「ヴィンテージは2001年です。」

「シャトー・パヴィは1998年にオーナーが替わって、さらに品質向上が図られて

いると聞いているわ! でも飲むのは初めて!」


 良子は、香りと色を楽しみ、一口含んだ。


「うーん、とてもおいしいワインだわ! 確かにシャトー・ペトリュスと間違いそうね?」

「そうだろう? マスター、良子さんもシャトー・ペトリュスのようだって!」


 良子は、マスターに向って首を振った。

そして和音の顔を見つめた。 

視線を落とすと、和音は左手でワイングラスを持っていた。


「和さん、冗談で言ったの。シャトー・ペトリュスもシャトー・パヴィーも

メルロが主体でカベルネ・フランがブレンドされています。決定的な違いは

シャトー・パヴィーだけにカベルネ・ソーヴィニヨンがブレンドされていて、

このワインにはそのタンニンの力強さを感じとることができるの!」

「このせいかな・・・・」


 和音はワイングラスをテーブル置き、右手の平を見つめた。

右手の平にはブドウのあざが浮かんでいた。