ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 34ページ目 手の平のブドウのあざ   

2013-02-05 23:01:24 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【34ページ】


 丸山は、二杯目のシャトー・ノートンを美紀に注文した。

美紀から聞いたマスターは、シャトー・ノートンをワイングラスに注いだ。

そして冷蔵庫から赤い塊を取り出し、もう一つのワイングラスに入れ、シャトー・ノートン

を注いだ。

二つのワイングラスが美紀によって、丸山と美鈴の席に届けられた。


「わっ!」


 美鈴は感嘆の声をあげた。


「私のワイングラスには、赤いハートが入っている!

これは?・・・・・・・」


 美鈴は、これはプロポーズかしらと思いながら丸山を見つめる。


「美鈴さんの苦手な赤ワインのハートの氷だが、ぜひ受け取ってほしい!」


 美鈴は、ゆっくりシャトー・ノートンを飲み始めた。

そしてそれを飲み干すと、グラスの底には赤いハートだけが残った。

この赤いハートが丸山と美鈴の運命を決めるのだ!


 美鈴はワイングラスの底を上にあげ、赤いハートを口に含んだ。

渋い、酸っぱいと思って、一瞬目を閉じた。


「あれ?」


 美鈴は目を開けると、


「甘くておいしい!」


 赤いハートの氷は、フランス地中海地方バニュルスの天然甘口赤ワインであった。


 美鈴は、丸山に微笑みかけて、頷いた。