２ 催眠術師の挑戦 ２０ページ目

【２０ページ目】


社長も、ワイングラスを手に取り、シャトー・クーテを飲んだ。


社長　　　　ほんとうですね？
　
　　　　　　１０年以上熟成された割には、甘さとコクが弱いですね。

　　　　　　ソーテルヌの唯一の特別１級のシャトー・ディケムのオールド

　　　　　　ヴィンテージを頼んでみます。

催眠術師　　それは楽しみですね？

社長　　　　打田さんが、催眠術師を目指したきっかけをプロフィールで知りまし

　　　　　　た。中国での旅行の体験がそうですよね？

催眠術師　　サラリーマンで入社５年目での中国旅行だったのですが、お土産屋に

　　　　　　水晶の玉を勧められたのです。とてもいい水晶の玉で、なかなか市場

　　　　　　に出ない物とのことで８０万の値段でした。私は、掘り出し物だと

　　　　　　思い思案していました。すると後ろでやりとりを見ていた日本人が、

　　　　　　私が買わないのなら、売ってほしいと言い出しました。

社長　　　　それで打田さんが水晶の玉を買ったのでしたね？

催眠術師　　まるで催眠術にかかったように、ガラス玉を８０万で買ってしまった

　　　　　　のです。

　　　　　　帰国後、くやしい体験をした私は、催眠術に興味を持ち、結果的に

　　　　　　今催眠術師をやっているわけです。

　　　　　　８０万円のガラス玉が３０倍以上の年収を稼ぐきっかけになったので

　　　　　　大事に飾っています。


二人のテーブルにシャトー・ディケムが運ばれて来た。


２１ページに続きます。

２ 催眠術師の挑戦 １９ページ目

【１９ページ目】


社長　　　　すべて、打田さんにお任せしたいと思っています。

　　　　　　テイスティング対決には、トリックを使っていいのですよ！

催眠術師　　トリックを？

社長　　　　はい、しかしワインの中身を替えることはできません。

　　　　　　もちろんワイングラスに味を変える物質を付けることもできません。

催眠術師　　ということは、催眠術を使ってもいいのですね？

社長　　　　そうです。

　　　　　 それは、禁止事項に入っていません！


二人の前にグラスワインが運ばれて来た。


社長　　　　ソーテルヌの貴腐ワインを注文しました。

　　　　　　どうぞ飲んでみてください！

催眠術師　　とてもおいしい貴腐ワインですね。

　　　　　　これは、ソーテルヌの格付け１級のシャトー・クーテですか？

社長　　　　その通りです。

　　　　　　打田さんは、ソムリエとしても一流ですね？
　
催眠術師　　いいえ。

　　　　　　このシャトー・クーテは、とてもおいしいのですが、フルーティで

　　　　　　フレッシュな甘さを感じるので、若いヴィンテージなのですね？　

社長　　　　ええ？フレッシュな味覚ではないと思いますが？

　　　　　　１９９７年のヴィンテージを頼みましたので、熟成した味わいの

　　　　　　はずです。　　　　

２０ページに続きます。