夕 凪 ~ゆうなぎ~
どんな声だったのか
時々 わからなくなるの ごめんね
思っていたより 時は残酷
かつては海だった この
人工海浜の まん中に立って
弱まる風のなかに あなたの
声を さがしてみる けれど
この頃は
何も見つけられない日が多くて
ほんとに ごめん
何もかも 忘れられなくて 泣いた
あの夏の日の私も
腹立たしいことにも ぼんやりしてしまう
今日の私も
おんなじ私だと 思いたいのに
「母ちゃんのことは、なんちゃあ 心配せんで ええけんな」
「あんたらは うちの 宝物じゃけん」
あなたを大切にできなかった
という後悔を 大切にしながら
私は生きる と 決めているから
風向きが変わる前に 歩き出す
そして そのまま 静かに歩き続ける
あなたがくれた 命だから