亡くなって18年。
母に捧げた詩です。 . . . 本文を読む
夏の月
廊下を移動する乱暴な足音が、エフレム神父の滞在している部屋の前で止まる。
ドンドン、ドンドン!
「エフレム神父、まだですかぁ。僕たちで先に行きま・・・。」
ドアはすぐに開かれ、鋭い声が返ってくる。
「いったい、どこへ行くというのですか?キリト。就寝時刻は、もう過ぎていますよ。」
長崎での合宿2日目の夜。
隊の皆で近くの海へ行くことになったから、と水鏡はキリトに言った。言われた時間に外 . . . 本文を読む
「さ、行きましょうか、マリア。」
水鏡が当然のように歩き始め、つられてマリアも歩き出した。しばらく、ゆるい坂道が続く。昼間の熱を含んだ石畳の道が、温かい。
「あの、水鏡さん・・・。キリト、待ってなくてよかったんですか?」
「ああ、キリトですか。彼なら、もう、来ませんよ。」
「えっ?」
「来ないでしょう、多分。エフレム神父がそれを許すわけがないですから、ね。」
少し考えて、マリアが、たずねる。
「え . . . 本文を読む
ふたりで黙って歩くうちに、潮の香りが強くなった。丘からの涼しい風が、ふたりの背中を押す。
「波打ち際まで、あるけますか。」
月明かりに馴染んだマリアの目に、秀麗水鏡のやさしい笑顔が映る。
「あっ、はい。」
引いていく波が残したきれいな砂の模様のうえに、ボールがぽつんと残されている。
「あっ、水鏡さん、あれって、昼間の・・。」
「ああ、・・・・ボールだけ、置いていかれたようですね。」
だれも居ない浜 . . . 本文を読む