@やはり「伝統」と聞くと古いもので、良いものというイメージがあるが、この書はその「伝統」という幻想を描いたものである。「伝統」には、法的定義はあるのか、時期的にいつから始まるものなか、また何を持って「伝統」というのか。結果は「曖昧であり、一方商売の味方でもあり、都合に合わせて創り出したもの」とある。特に気になったのがご先祖の「お墓」、「戒名」なるものも。「墓」自体ができ始めたのは、僅か2百年ほど前で戒名も位の高い人のみであった事実など、現在では墓の4割が無縁墓、将来はもっと増える(10年後6割)とある。お寺・仏僧も商売、そう思うと、沢庵和尚の遺言は何と無く頷ける(本文参照)
『日本の伝統という幻想』藤井青銅
- 伝統に関する「法則」と伝統に付随する「見えない言葉」
- 「伝統は自ら過去へ遡っていく」
- 「伝統の第一法則」
- 人は自分が生まれた時にあるものは、皆大昔から続いてきた伝統だと思う
- 「伝統の第二法則」
- 伝統は、自ら過去に遡っていく
- 「伝統の第三法則」
- 人は、自分が今見ているものが、開始当時から普遍のまま続いてきた伝統だと思う
- 「伝統の第四法則」
- 誰かにメリットがある伝統は長く続く
- 「伝統の基本法則」
- 金銭的メリット・ビジネス
- 権威性メリット・マウンティング
- 「伝統の誤り」
- 「初詣」は明治になってからのもの
- 「成人式」は元服の儀式が変わり昭和21年蕨市が最初
- 「恵方巻き」平成2年大阪寿司組合が発祥
- その他「おせち」「雛祭り」「端午の節句」「七五三」「お中元」「お歳暮」などは明治30年代デパートが発祥
- 「日本人が弱い『伝統』」
- 24節気+雑節(日本では昔から〜には〜をする伝統がある)
- 〜には 「する」「食べる」「飾る」「贈る」が入る
- ネーミングに「ダジャレ」「大喜利」「当て字」が多い
- 年越しそば・三三九度・干し柿・海老・昆布・黒豆
- 数の子・たたきごぼう・鯛・鰹節(勝男節)
- スルメ(寿留女)・指輪(結美和)
- 節分の豆まき・菖蒲湯・引っ越し蕎麦
- 「伝統から新規ビジネス」=そうなると面白いから・楽しいから
- 初めて〜した日
- 季節に合わせた日
- 日付けの語呂合わせ
- 日付けの形状見立て
- 江戸・京都・など旧国名を使う+製品+伝統
- 「日本人が好む4つの時代」
- 平安中期(源氏物語)1000年前
- 江戸(時代劇)水戸黄門・銭形平次・遠山の金さんなど
- 明治後期(司馬遼太郎時代)日清・日露戦後
- 高度成長期(3丁目の夕日)
- 「対立と伝統」
- 早慶戦は明治36年生まれ
- 東京野球倶楽部(巨人軍)が昭和9年(1934年)
- 大阪野球倶楽部(阪神軍)昭和10年
- 「本家」と「元祖」(八つ橋・カステラなど)
- 「国技」
- 相撲常設(両国回向院)明治42年
- 相撲時間はテレビ映像で幕下が5分から2分に短縮
- 十両は7分が3分、幕内10分が4分に(1928年)
- 国技館は板垣退助が命名
- 「お墓の伝統」
- お墓を建て、お参りする伝統は2百年くらいの歴史しかない
- 現在4割の墓が無縁仏、10年後には6割を超える試算がある
- 「戒名」
- 一般には居士・大姉・信士・信女、皇室は〜院
- 「沢庵和尚」江戸時代の名僧の遺言
- 「葬式はするな。香典も一切もらうな。死骸は夜密かに山に埋めて二度と参るな。墓を作るな。朝廷から禅師号を受けるな。位牌を作るな。法事をするな。年譜を記すな。」
- 「中江兆民」明治の思想家
- 「人が死に墓地ばかりが増えて、宅地や耕地を侵食する。自分を火葬にした骨と灰は海中に投棄してほしい」(明治半ばで火葬は30%、明治三十年、伝染予防法で火葬が増えている。1980年で90%を超え、現在ではほぼ100%。