続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『喜劇の精神』

2017-07-27 06:39:21 | 美術ノート

 『喜劇の精神』
 
 切れ込みが入った人型の紙(平面状のもの)が床面に対し立っている。その陰影は床に落ちているが、壁と思われる箇所にはついていない。つまり背後は、壁ではなく深い闇のような空間である。

 この切れ込み、折り畳んで刻んだというものでなく、ある一点(胸の辺り)をもって回転して居り、この広がりは無限を意味しているかも知れない。(折り畳んだように見えるが折り畳んだ軌跡がない)
 単純に見えるが、きわめて複雑な構造を有して計算されている刻みの配列。
 床面は平らにも坂にも見え、男は降りて行くようにも振り返りターンするようにも見える。

 なぜ紙状であって肉体がないのか、血肉の喪失は存在の希薄でもある。『喜劇の精神』が自分(尊厳)から脱却して全うすべき仕事ということだろうか。換言すれば、自分を隠すことである。刻まれて向こうが透けて見える薄っぺらな存在、どちらへ行こうとしているのか、どちらを向いているのかさえ特定できない。
 特定・推定を否定し、何物でもない存在としての立脚は、背後に大きな不確定な闇を抱え込んでいる。
『精神』ではなく『喜劇の精神』としたのは、マグリット自身の自嘲であり、これはマグリット自身の精神の吐露だと思われる。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)

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