枕のある床面と右の壁面の接線が枕によって隠れている。床面に対し壁面は直立していると考えるのが通常であるが、この場合、枕のある床面がずっと手前にある可能性も視野に入れるべきかもしれない。
一つの空間を形作っているように見える三つの面は、(影)と(隠ぺいされた接線)の条件から距離を隔てているとも考えられるのである。少しの隔たり(隙間)というより想像を超える面の合体で疑似空間を見せている。それぞれ不確定な位置にあり、宙に浮くような状態を見せているフレームなども枕の上ではなくずっと手前であるかもしれない。
描かれた対象物は、想念(視覚)の角度によって動くのである。
浮遊するかのフレームの画面は二つに分割されている。
ゼブラ模様の背景は曲線ゆえに(自然)であり、床面・壁面・フレームは直線ゆえに人智のかかわった世界のものだと言える。
青い画面の中の三つの白い物はやがて形を変えるのではないか、と思わせる物体である。青い画面の中には時間があり、黒い画面には静止と無限が混在している。
この作品に描かれた対象物は、それぞれが孤立しており距離間すらも測れない。存在しているが非存在の体を成しており、見方の相違により動いてしまう。
静かなる『色彩の変化』の意味が浮上する所以である。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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