ここはどこだろう、背景に山々が映らないということは相当に高い地点だと思われるが、緑、樹木が茂っている。しかし、観察者の視点はその樹木の先端にあり、ビルボケ同様樹木に比して巨人である。二体のビルボケより小さいという関係かもしれない。
とすると、父・母・子を疑わせる構図である。
『告知』、子の誕生の図だろうか。
波打つ板状のものは何を示唆しているのだろう、時間あるいは季節の移り変わりなのか…そこに点在する大小の馬の鈴(言葉・伝説・風評など)は、記録だろうか。
その手前には人為的に刻まれた穴が縦横にある平板がある。折り畳んでどこまでも拡散・連鎖していく穴…脈々と受け継がれていくDNAの形象化かもしれない。
つまり二体のビルボケ(擬人)の背負うものは、ルーツであり、記録なのではないか。二体は男女を思わせるが、人類の祖としての君臨とも仮定できる。
《原初/源/始まり》の場であり、《帰還としての死》の場ではないか。幾つもの石の塊はすでに遠い昔の痕跡(死人)かもしれない。
『告知』、生死をつかさどる告知の場、異世界の現出は条件だけを提示している。沈黙の告知は運命とも称されているのではないか。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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