続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『軽業師の休憩』

2016-04-11 07:03:40 | 美術ノート

 『軽業師の休憩』
 切断されたり、奇妙に変形された軽業師(女性)の身体が、石と同等に埋め込まれた壁がである。大きな開口部から見えるのは、海とも空とも判断しかねる青い無空。(空なら中空だし、海なら海中であり、現実の時空ではないということかもしれない)

 女の顔、胸(乳房)、お腹(陰部)、手足、肩、それと認められる部分を不明な形態の部分でつないでいる。それら部分は変則的にではあるがどこかで一つに連携している妙。

 これを以って『軽業師の休憩』と題した意図はどこにあるのだろう。
 軽業師…常軌を逸した動きを観客に披露する仕事であるが、胸や陰部をさらけ出す仕事ではない。しかし、肉体をもって身体機能の極限を展開する作業には精神的にも物理的にも極限の疲労感が伴う。
 身体の分裂・破壊はあり得ないが、観客に錯視させるほどの究極の業を鍛錬・修行する。

 換言すれば、錯視の状態に誘引する仕事でもある。
 軽業師は当たり前の身体を持った人間であれば、想定外の無理難題に挑戦しているということである。そのタガを外す休憩。
 その休憩は、石に同化するように休み、身体を自由に散在させる夢想が心地よいのかもしれない。

 精神の解体を思案するマグリットが、身体の解体を夢想した図でもある。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


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