『星座』
星座が描かれているわけではなく、地平に立つ二本の樹。ごく自然に見える樹の背後に、それ(自然の樹)を被うかのような一葉を模し肥大化した樹があり、さらに遠方に島か小山のような繫みがある。
黄色の帯状の面は、水平線(つまり海)なのか雲の果てなのかは定かではない。
下方は白雲だが次第に色の濃い雲になり、天頂に向かって青空に変化していく兆しが見える。
しかし、その青空を覆い隠すような赤い幕がセレモニーめく垂れており、その中心に鳩とオリーブの葉が紋章のように飾られている。
これらを『星座』と称している。
二本の樹は虚偽(模樹)と現実(自然)、黄色の水平線は海を模しているのか不穏不明の領域である。(半分を島と雲で隠している)
赤い幕は天空に宙づりされているわけではないから、この空間の手前には巨きな建屋の開口部があると思われる。
この巨きな建屋の存在が何かは不明であるが、明らかに人為的な意図が隠されている。
鳩とオリーブの葉は『大家族』の象徴であり、始まりである。
『星座』を考えてみると、恒星を群によって区分けし、それぞれ空想(イメージ)をもとに何かを当てはめ命名したものである。根拠というには少し無理があるが、命名されたものは、決定でもある。
虚実入り混ぜた思いも、決定となれば承服せざるを得ない。混沌とした思いに反旗を翻すこともなく伝承されている『星座』、世界はそれに似た構造を成してはないだろうか。
マグリットのため息が聞こえる。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
最新の画像[もっと見る]