続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

『若林奮 飛葉と振動』展

2015-08-23 07:07:30 | 美術ノート
 若林奮・・・彫刻家である。
「けれど彼の仕事は、通常の彫刻の概念を打ち破るものでありました。」とは館長さんのお話。
「鉄を多用していますが、あらゆる形でこの世界に鉄は留まっていると考え、どこかの国の『鉄の雨が降った』という報告には大変喜んだとも聞いています。
 世界と自分の距離を測る、例えば、犬と自分…この作品などは、その感覚を巧みにつかんでいると思います。何の変哲もない木材、重量のある鉄材の下に置いて使用したものと思われる傷や凹みのある角材に犬の頭部をあたかも泳いでこちらに向かっている風に設えてあります。犬好きの方なら犬がこちらに向かってくるときの感覚は周知のことと思いますが、まさにこの通りですね。
 世界との関係性を測るとき、風や雨による振動を身体性(ヒューマンスケール)をもって推しはかる術への期待のようなものを探っていたと思われます。」


 館内のそれぞれの場所で立ち止まりその対峙関係の微妙な揺れ、曖昧さを指摘。
「彼の作品は目立って在る、というのではありませんから、認識し探す必要があります。」など細部に渡り、作家の意向に沿った丁寧な説明を受講。


 若林奮という作家の世界(風景・動物・植物)に対する感性、その距離の測り方、限りなく揺れ動いてその存在を露わにし、また消滅していくプロセスへの凝視。

 不思議であると同時に繊細で知的な感性のあくなき追求姿勢に震撼してしまった。
 頭の中ですぐにまとまるという世界観ではない、押し黙り、ただずっと若林奮の作品について、今も再考している。


 神奈川県立近代美術館水沢館長さんのギャラリートーク、ありがとうございました。(葉山館にて)

『銀河鉄道の夜』56。

2015-08-23 06:59:23 | 宮沢賢治
「さうかねえ。」
「いまも毎朝新聞をまはしに行くよ。けれどもいつでも家中まだしいんとしてゐるからな。」
「早いからねえ。」
「ザウエルといふ犬がゐるよ。しっぽがまるで箒のやうだ。ぼくが行くと鼻を鳴らしてついてくるよ。


☆毎(そのたびに)重ねて申(もうしのべる)文(文章)である。
 化(形、性質を変えて別のものになる)を注(書き記す)と、双(二つ)を兼ねた相(ありさま)の講(はなし)が備わっている命(廻りあわせ)がある。

『城」2061。

2015-08-23 06:46:00 | カフカ覚書
Kは、おどろいてその質問に否定に返事をし、オルガはなにか特別なニュースでも知らせてくれるつもりなんですか、とたずねた。アマーリアは、ちょっと怒ったように顔をゆがめて、無言のままうなずき(これは、あきらかに別れの身ぶりであった)、またもとの場所に横になった。


☆彼は驚いて否定し、オルガ(機関/仲介者)は特別な知らせが必要ですか、とたずねた。アマーリア(作り話/マリア)は少し立腹したが、黙ってうなずき入ることをためらった。これはあきらかに別れを告げる身ぶりであった。そして再び元のように横になった。