雪月花 季節を感じて

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クレーの実験室

2011年06月15日 | 雪月花のつぼ ‥美との邂逅
 
 東京国立近代美術館にて開催中の「パウル・クレー展」へ出かけました。

 自由でやわらかな線描、つい触れたくなるカンバスの質感、まるで和色の見本帖のような色彩‥ いつもながら引きこまれます。さらに今回の展観は、絵を回転させたり、写したり、切って・分けて・貼ったり‥という、さまざまな試みから作品が生まれるまでの過程を追う興味深い構成で、会場はさながらクレーの実験室のよう。画家自身の風貌も、芸術家というより科学者みたい。クレーの意外な一面を見るようです。

 クレーとの出会いは、ちょっと変わっています。
 ある図録に、梶川芳友氏(何必館・京都現代美術館館長)が茶室の床にクレーの「舵手」を飾り、魯山人の織部の籠花入を取り合わせているの見たとき、クレーと魯山人が響き合い、なまなましい土の質感が伝わってくるのをとても不思議におもいました。以来、パウル・クレーから目が離せません。(このことは、以前このブログに書きました

 いっしょに鑑賞したのは、昨年の紬塾で知り合った友人ふたり。そのせいか、アースカラーを基調とした作品の多くが着尺や帯地に見えてしまうという楽しさも。三人の紬のきものと帯もしっくりと場になじみ、眼福のひとときでした。


 ちなみに、上の絵はクレーの作品ではありません。クレーの作品に影響を受けた日本の銅版画家・駒井哲郎氏(1920-1950)の「Nature Morte(静物)」です。「え。クレーじゃないの‥」という方。ふふふ、だまされましたね ^^