雪月花 季節を感じて

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文様印(六) ぽち箋

2007年10月04日 | 和楽印 めだか工房
 
 お彼岸後のきびしい残暑にうんざりしていましたのに、神無月は一転してつめたい秋雨で明けました。気温も20℃を切る肌寒さで、温かな飲みものや食べものが恋しくなるほど。そろそろ衣更えをしなくては‥と思っています。先日は主人と久しぶりに街へ出まして、主人は銀鼠色の、わたしは柿色のカーディガンを買いました。これを羽織るのは、北の地方から紅葉のたよりの届く冬どなりの季節でしょうか。


 初夏のころから準備を始めたスタンプカーニバル出展用の品々がようやく完成して、会場への発送を済ませて当日を待つばかりとなりました。「和楽印 めだか工房」の作品の中から、今回はぽち箋(メッセージカード)の一部を公開します。すべて名刺サイズです。
 ぽち箋はいつも数枚を携帯して、ちょっとしたお礼やメッセージを添えるときに使いたいもの。最近は、和柄の付箋(ふせん)も市販されているようですね。初対面の方と連絡先を交換したり、不在の人にメモを残したりするとき、つい手帳やメモ用紙にささっと書いてビリッとやぶって渡してしまいがち。でも、オリジナルのぽち箋を使えばちょっとステキかも‥ なんて、ほんの自己満足にすぎませんけれども、楽しみながら全18種をつくりました。いちばん下のカードは、スタンプカーニバル用に作成しためだか工房の名刺です ^^

 日本人は、じかに金品に触れたり渡したりせずに、風呂敷、袱紗、ぽち袋、お懐紙、ぽち箋などを上手に使って、謙譲の気持ちをこめてモノを扱い、他人さまとのおつきあいを円滑にしてきました。こうした道具や小物によって、相手と自分の間に温かなこころづかいを介在させて、ベタベタしたなれ合いのつきあいを避けてきたのでしょう。
 でも、数日前に借りた小銭を返すのにぽち袋を使ったり、分けていただいたお菓子をお懐紙につつもうとしますと、最近は「あら、おおげさね」なんて面倒がられることもしばしば。時と場を考えて使わないと、こちらの気持ちはうまく伝わらず、かえって相手に不快な思いをさせてしまうことにもなりかねません。むつかしいものですね。


 先日、図書館で 『すぐわかる 日本の伝統文様』(並木誠士監修、2006年東京美術刊 ※)というビジュアル本を見つけました。飛鳥・奈良~江戸時代まで、時代を追うごとに洗練され流行した文様の物語や、文様にこめられた思いを、一流の美術工芸品を例にとりながら解き明かしてゆく構成になっていて、勉強になりました。
 日本のデザイナーたちは、動物や架空の獣、人物、植物、器物、野菜、気象、風景、風俗、渡来品、文字だって何だって文様にして、きもの、楽器、文学、仏具、調度品、陶磁器、漆芸、家紋、伝統芸能の衣裳、暮らしの道具類‥等々、あらゆるものにその斬新で普遍的なデザインをほどこしました。ほんの趣味にすぎない消しゴムはんことはいえ、いつの時代にも新鮮な文様をとおして、日本文化の全容を見る思いがします。

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※ 『すぐわかる 日本の伝統文様』 は、さくら書房 で紹介しています。