雪月花 季節を感じて

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文様印(四) 青海波と千鳥

2007年09月06日 | 和楽印 めだか工房
 
 遅まきの主人の夏休みで、先週末から奥日光へ行ってまいりました。群馬県側から峠を越えて中禅寺湖をめざすのですけど、山の入口からしばらくはりんご園が点在していて、この時季は頬を紅く染めたかわいいりんごたちが迎えてくれます。峠道の両際に萩や藤袴(フジバカマ)が咲き乱れ、末枯れた夏草の広がる戦場ヶ原には吾亦紅(ワレモコウ)や竜胆(リンドウ)がぽつぽつと顔を出していて、ひと足早い高原の秋を楽しみました。湖畔は晴天でも気温22℃でしたから、山を下りてから残暑が身にこたえます‥


 消しゴムはんこの文様印シリーズ四回目は「青海波(せいがいは)」と「千鳥」です。みなさまにも親しみのある図柄と思います。
 「青海波」の原型は世界各地に見られ、日本には「唐草」と同様に中国から伝わりました。一説には、中国青海地方の民族模様のひとつといわれ、もともと山岳文様だったそうなのですが、日本では鎌倉時代から波(水)の文様として普及しました。
 平安時代の『源氏物語』「紅葉賀」の帖に、光源氏と頭中将が桐壺帝の御前で舞曲「青海波」を舞う場面が描かれています。「源氏の中将はせいかいはをぞ舞ひ給ひける」‥ 夕日に映える紅葉がはらはらと散る中、藤壷女御への想いを胸に秘めつつ「青海波」を舞う源氏の君の姿は、この世のものとは思われない美しさであった‥とあり、この中国(唐)から渡来した舞曲「青海波」を舞うときに身につける装束(袍 ほう)や太刀は、「青海波」の地紋に「千鳥」の文様と決まっていました。また、『枕草子』にも裳の模様として登場するのですが、先に述べましたように、明確に波(水)の模様として認識されるようになったのは鎌倉時代になってからのようです。舞曲名のほうが先で、後世にこの曲名にちなんで「青海波」と名付けられた、というのが一般的な説です。

 魚のうろこのような、おだやかな半円の波形がどこまでも広がってゆくこの「青海波」も、吉祥文様のひとつ。波のひとつひとつが末広がりの扇の形をしていますことも、おめでたいしるしです。それに、水面近くを群れをなして飛び難を避けるという「千鳥」を合わせて「波に千鳥」となります。ご覧のとおりの愛らしい図柄ですから、和の雑貨を扱うお店をのぞけばたいてい見つかります。身近に取り入れやすい伝統文様ですね ^^ 京からかみには、「波につぼつぼ」「波に鱗鶴(ウロコヅル)」といった組合せ文様もみえています。

 淡海(あふみ)の海夕波千鳥汝(な)が鳴けば
                  心もしのにいにしへ思ほゆ

 (『万葉集』 柿本人麻呂)


 太平洋上を北上する台風9号の影響により、東京は昨日から断続的に雷をともなった激しい雨が降っています。週末まで雨がつづくようなので、数日分の食糧を買いだめしてまいりました ^^; 台風の進路予想範囲内にお住まいの方は、くれぐれもお気をつけておすごしください。

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