雪月花 季節を感じて

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夏氷

2006年08月10日 | 季節の膳 ‥旬をいただく
 
 立秋をすぎ、もうすぐ盂蘭盆です。車で帰省をされる方は、安全運転で気をつけてお出かけください。
 東京地方は台風の影響で断続的に雨が降り、このところ気温は30℃を下回っていましたが、東海より西の地方は残暑がきびしいようですね。お見舞いを申し上げますとともに、ひんやり冷たい氷菓子をお届けします ^^

 冷たい食べものが好きなわたしにとって、かき氷は夏の楽しみのひとつ。祭りの屋台や道端の店に、波に千鳥の絵柄に大きく赤い字で「氷」とある氷旗が風にゆれているのを見るだけで、ちょっぴり涼しくなるから不思議です。
 かき氷って、氷を細かく砕いたものに好みのシロップやアイスクリームをトッピングするだけの、いたってシンプルな食べものですよね。炎天下を歩いた後、甘味屋さんに入り、熱い緑茶とともにかき氷をほおばりながらひとやすみしますと生き返ります。食べ終えるころには、店内の冷房がききすぎるくらい身体が冷えてしまうけれど、ふたたび外に出れば、しばらく暑さを忘れて元気に歩けます。
 古くは清少納言の『枕草子』に登場する「削り氷(けずりひ)」。削った氷に甘葛(あまづら)をかけて食したようです。もっとも、いちばんシンプルなのは氷を割っただけの「かち割り」ですね。こちらは、いまごろ甲子園球場で飛ぶように売れていることでしょう。

 かき氷には楽しい思い出があります。
 真夏の京都。わたしはある門跡寺院をめざして、陽光の照りつける長い長い坂道を登っていました。京都特有の、素肌にじっとりと湿気のまとわりつく炎暑の中を、ゆうに20分も泳ぐように歩きつづけました。拝観後、熱くなった身体を冷やしてくれるかき氷をいただくことを楽しみにして。
 門を出てすぐのところに茶屋がありました。カメ池のある広い庭を横切って店に入り、さっそく氷宇治金時を注文。エアコンのきいた座敷でほっとしていると、運ばれてきたのは、かなりボリュームのある、きれいな円錐形をした氷宇治。はて‥? わたしは氷宇治“金時”を頼んだのに、肝心の小豆がのっていない‥。うーん、これは店の人にクレームを、とも思ったのですが、なにせこの灼熱の中を20分以上も歩いたのですから、これ以上待つ気力はもうありませんでした。
 あきらめ気分で氷にスプーンを入れてみると、「‥?」、スプーンの先が何か固いものに当たったようです。さらにサクサク、スプーンで氷を崩してみると‥ ありました、抹茶がけの氷の中に、小豆がたっぷり。なんて粋なしかけでしょう! あきらめていただけに、よろこびもひとしお。(もしかしたら、店主がこちらを見てニヤニヤしていたかもしれません) で、あっという間に平らげてしまいました。 ‥京都って裏切らない。だから、好き♪


 上の絵は、東京羊羹の夏季限定商品です。粗く削られた氷に濃ゆ~い抹茶ソース、その上にたっぷりと甘さほんのり、大粒のゆで小豆。これを座布団にして、まぁるいバニラアイスクリームがでん、とのって出てきます。こちらも、氷の中に小豆が隠れているんですよ。さらに、その氷の要塞を側から固めるように、モチモチの白玉が三つもついて。これを味わう幸せといったら‥ ふふ、清少納言に食べさせてあげたい ^^

 匙なめて童たのしも夏氷 (山口誓子)

 あなたも、この季節限定のお楽しみ、甘くて冷た~いかき氷を召し上がれ。
 
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