ホーム・トリミング

　ねちねち地獄の汚れが蓄積してきたのと、フロントラインのタイミングが来たので、愛犬アーサーをシャンプーしてやる。





　リンス浸透の間に撮影。待たされて神妙な表情。しかし静かなのは今のうちだけ。
　風呂場から出すと、盛大にブルブルしながら部屋中をダッシュするのである。





　ラグマットも足跡点々だ。手間がかかるったら。
　でも楽なこともある。前もってバスタオルを敷いておくと、
　




　ヘッドスライディングしながらひっくり返り、勝手に自分で体を拭くのである。
　バスタオルを広げてヒラヒラさせると、闘牛よろしく頭から突っ込んでくる。アーサーはタオルを使った遊びだと思っているようなので、タオル越しに格闘するような感じでどんどん拭いていく。
　寒い季節以外、我が家ではドライヤーは使わない。熱くなりすぎて可哀想なので、タオルドライを繰り返し、最後は自然乾燥。今日もこの方法だったが、もうそろそろ冷えてくるから、次回のシャンプーではドライヤー登場かも。





　ああ、それはタオルじゃない！
　シャンプーの時にびしょぬれになって脱いだＴシャツだ。人の脱ぎたての服をかぶるな、顔を埋めるな！
　とにかく布を置いておくと、突進するので楽でもあり、ややこしくもあり。

　さて毛が乾いたところで、今日はバリカンまでいってみよう。
　といってもアーサーはトリミングがいらない犬種なので、だらしなく伸びている一部分だけ、ちょっとそろえる程度だ。
　その部分とは



おしり。


　座った状態でも横にはみ出すこの長さ。コーギーをトリミングに出す場合は、ここをまあるく刈り込む「桃尻カット」にするのが通例だ。短足犬の歩き方が引き立ち、よりプリプリとお尻を振っているように見えるカットである。
　できる事ならそんなカットにしたいものだが、腕が足りない。道具が足りない。うちにあるのはナショナル・ペットバリカン一本きりだ。
　とりあえず、最低限見苦しくない程度にそろえばいい。

　というわけで、いやがるアーサーをランドリーボックスの上に乗せ、ガッチリ脇で押さえつけてバリカンを動かしていく……のだが、アーサーがやっぱりモゾモゾ動くので、思いのほか深く刃が当たってしまったり、全然剃れてなかったりと大苦戦。
　その結果



若干スッキリ。

　
　しかし



よく見りゃ段々


　まあ……仕方ないか。これでも初めてバリカン使った時より巧くなったと思う。
　初めてアーサーのお尻を刈って散歩に出た時、同じ雄のコーギーを飼っている若いご夫婦と一緒になった。その奥様が開口一番、
「お尻の毛、切ってます？」
　ああ、あまりの下手さ加減に、一発で素人仕事が看破されたのか。そう思い正直に、
「バリカンで刈ったんですけど……」
　と告げたところ、奥様の言葉は意外なものだった。
「バリカン！　やっぱりハサミじゃ駄目なんだって！」
　そういうと傍らにいたご主人を振り返った。微妙な表情のご主人。奥さんはなおも続けた。
「実は、うちの子もお尻の毛がすごくて、夕べ主人が刈っちゃったんです！　ハサミで！」
　そういうと足元のコーギーのお尻をこちらに向けてくれた。
　その子のお尻の毛は、ほぼ丸刈りに近いぐらい、しかもガタガタに刈り込まれていた。ハサミの刃渡りが分かるぐらいに。
「こんなにしちゃって……」
　奥さんはこぼしながら愛犬と夫を引き連れ、散歩コースに帰っていった。
　コーギーの歩みと一緒にプリプリゆれるお尻。見送るガタガタの毛並みが、ちょっと悲しくも微笑ましかった。

　コーギー飼いは、みんな、お尻の毛で悩んでいる。



お疲れさん。