ジャン・ギャバンと映画人たち

Jean Gabin et ses partenaires au cinéma

シモーヌ・シモン Simone Simon

2015-08-10 | 女優


 ジャン・ルノワール監督の『獣人』でギャバンと共演。鉄道の駅に勤める助役の若妻がシモーヌ・シモンで、堅物でケチな夫に嫌気がさし、機関士のギャバンの愛人になって夫を殺すように仕向ける小悪魔的な女を演じた。この役はルノワール自身が彼女に最適だと思って決めたのだという。ギャバンとの共演はこの一本だけだが、彼女にはロリータ的な少女の面影があって、汗だくになって働くギャバンが、こういう女に惑わされるのも分かる気がした。
 シモーヌ・シモンがシャム猫のような表情の愛らしさと小柄だが溌剌とした魅力を発散させた映画は、マルク・アレグレ監督の『乙女の湖』(1934年)である。『獣人』に出演する4年前で、この一本で彼女は一躍スター女優になった。『乙女の湖』は最近DVDが発売されたので、早速TSUTAYAで借りて、わくわくしながら見たが、今見てもシモンの魅力は大したものであった。美青年スターのジャン=ピエール・オーモンの恋人で、パックという名の娘がシモーヌ・シモンの役だった。夏の避暑地である美しい湖で二人は出会い、恋に落ちる。若い男と女のひと夏の思い出といった純愛映画なのだが、シモンはメルヘンに登場する妖精のようでもあり、後年フランソワーズ・サガンが小説で描いたような大人になる前の現代的な少女でもあり、不思議な娘を演じていた。



 シモーヌ・シモンは、1910年(1911年)4月23日、マルセーユ(またはベテューヌ)に生まれた。マルセーユとマダガスカルで学校教育を受け、30年頃にパリへ出てモード画などを描いていた。31年、『無名の歌手』の端役で映画デビュー。34年マルク・アレグレ監督に抜擢され、『乙女の湖』でヒロインのパックに扮し、一躍脚光を浴びた。この映画の評判で、彼女は、36年ハリウッドに招かれて数本に出演。2年後に帰仏して、ジャン・ルノワール監督の『獣人』でジャン・ギャバンと共演、若い人妻セヴリーヌの演技が話題になった。大戦がはじまって、再び渡米、アメリカ映画で活躍をみせた。解放後フランスに戻り女優を続けるが、戦前の輝きはなかった。53年10月、第1回フランス映画祭に招かれ来日。2005年2月22日パリで死去(94歳)。
主な出演作:『乙女の湖』(34)『黒い瞳』『みどりの園』(35)『四つの恋愛』(36、米)『第七天国』(37、米)『ジョゼット』(38、米)『獣人』(38)『第三の接吻』(39)『キャット・ピープル』(42、米)『誘惑の港』(46、英)『女の獄舎』(49、伊)『輪舞』『処女オリヴィア』(50)『快楽』(51)『三人の泥棒』(54、伊)『二重の運命』(55、西独)『青いドレスの女』(72)


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